億ション購入で住宅「50年ローン」はアリなのか? FPに聞く老後破産しないコツ【試算付き】
それでも、将来的な金利の変動を不安視するのであれば、どこかのタイミングで固定金利に変えるという選択肢がある。多くの銀行では変動金利から固定金利への変更に対応しており、固定金利のほうが金利は上がるが、金利変動の不安からは解放される。 ■35年ローンと比較して、総返済額は398万円増 超長期ローンのメリットは、返済期間を延ばすことにより、月々の返済額が下がること。デメリットは利息を支払う期間が延び、金利分の負担が増えてしまうため、総返済額が増えることだ。 1億円のマンションでペアローンを組んだ場合を想定し、5千万円を借り入れた場合の総返済額について、返済期間が35年と50年のローンを比較してみた。業界でもいち早く超長期ローンを取り扱ってきた住信SBIネット銀行の利率を元に算出したところ、返済額は50年ローンのほうが約398万円多い。同社では35年ローンと比べると、50年ローンは金利を0.15%上乗せしており、利息が返済額に重くのしかかっている。 「建築工事費は総じて上昇傾向にありますが、都市部の物件を除くと、住宅事情は以前とそう大きく変わっていません。価格が高騰していない一般的な物件を購入するのであれば、総返済額が増えることを考慮して、従来の35年ローンなどをおすすめします」(水野さん) 超長期ローンのメリットとなる月々の返済額は、今回の試算では約3万円抑えられた。水野さんによると、近年ではこの3万円をローンの返済にあてるのではなく、投資に回したいという理由から、超長期ローンに興味を持つ人が増えているという。 「住宅ローンの金利は低く、近年では投資信託などの投資商品の利回りが上回っています。この状態が続くと仮定すれば、返済期間を延ばし、浮いた返済額を投資することで、増加した総返済額以上のリターンを得ることが可能です」(水野さん)
返済期間を延ばすことにより、「団体信用生命保険」の加入期間が増えることも、超長期ローンのメリットだと、水野さんは言う。団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった場合、住宅ローンの残高がゼロになる保険のこと。最近では金融機関の競争が加速しており、団体信用生命保険の保障内容が手厚くなっているという。 「がんや8大疾病に罹患した際にも、保障を受けられる保険が増えてきました。保険料は住宅ローンの金利に上乗せされる形で支払いますが、個別に生命保険に加入するよりおトクと考えられます」(水野さん) ■返済プランのカギは「定年後の返済期間」 50年にわたる超長期ローンは、人生100年時代といわれる現代においてもその大半をかけて返済することになる。それだけに、契約前には返済プランをしっかり計画したい。 返済プランにおけるキーとなるのが、定年後の返済期間だ。30歳で契約、65歳で退職した場合、残りの返済期間は15年。退職金を繰り上げ返済にあてると、老後の資金繰りが厳しくなる。シニアスタッフなどとしての継続雇用やアルバイトで働き続けても、収入は現役時代より減少する。かつて老後2千万円問題が話題となった際は貯蓄の重要性が再認識されたが、ローン返済の負担が重ければ、課題はさらに深刻化する。 近年は金融機関にFPが在籍するようになった。住宅ローンを契約する前には、返済を含めたライフプランについて積極的に相談するといいだろう。 (ライター・丸田鉄平)