自力カスタムの車中泊カーに、いきなり降りかかった大災難…男一匹宝探しの北陸旅は波乱万丈
DAY1。天候に不安があったので、高速で一気に福井まで
過去3回の車中泊旅では、3つ目のルールとして「高速道路を使わない」という縛りを追加していた。 誰に頼まれたわけでもない勝手な旅なのだから、急ぐ必要はない。 高速道路のグレーの防音壁を眺めながら走って、いったい何になるのだろうと思ったのだ。 さらに(実はこっちの理由が大きいのだが)、ベーシックグレードの貨物バンである我がスズキ・エブリイは、3速ATの非力なエンジンを積んでいるので、時速90km以上で走ると、心配になるくらいの大きな唸りをあげるのだ。 だが車中泊旅にも慣れた4回目の今度の旅では、しかるべきところで高速道路をちゃんと利用しようと方針を改めた。 忙しい中でやりくりした6日間の限られた旅程で、一般道にこだわりすぎると、行きたいところにたどり着けないかもしれないと思ったのだ。 そして初日には一気に、東名高速道路~名神高速道路~北陸自動車道を駆け抜け、夜までには福井県に到達するという計画を立てた。 初日にここまで頑張るのには理由があった。 予報によると出発日の夜から1~2日間、全国的に天候がかなり崩れる見込みだったのだ。 長い旅の間には、雨が降ったり槍が降ったりすることも想定済みではある。だが、やはり悪天候だと行動に制約がかかるので、そんな日にはひたすら車を走らせ、なるべく遠くまで駒を進める。 これが過去の車中泊旅で僕が得た、効率のいい旅の作法だったのである。
いきなりやって来た、のっぴきならない車のトラブル
行き当たりばったりの旅である以上、多少のトラブルはつきものだ。 僕の場合は特に、「何か問題が起こったとしても、それはそれでいい原稿のネタになるぜ」とかなり鷹揚に構えているのだが、旅を始めた途端、さっそくのっぴきならないことが起こってしまった。 朝8時に出発したものの、日頃の不規則な生活が祟って激しい睡魔に襲われ、海老名サービスエリアで2時間弱の仮眠をとった。 再び走り始めたが今度はすぐにお腹がすき、富士川サービスエリアで昼メシ休憩。そして、いよいよふんどしを締め直して一気に福井まで走破するぞ!と思った矢先のことだった。 広い東名高速の3車線の一番左端をキープし、時速80kmで爆走(エブリイちゃん非力なので)していたときのことだった。 車の天井のほうから“パリン、パキ、ペキ”という乾いた音が聞こえたと思ったら、直後から車の風切り音が妙に大きくなった。 これはもしや……と不安に思った僕は、時速80kmをキープしつつ次の由比パーキングエリアに入り、車の屋根の上を確認した。 すると、心配したとおりのことが起こっていた。 僕のエブリイの屋根には、車内のポータブルバッテリーにつないで充電するために使う、ソーラーパネルを設置している。 屋外工事用の強力なビニールテープと、防水両面テープをたっぷり使い、これでもかと思うほど頑丈に貼り付けていたつもりだった。 だが設置から1年半の間ずっと車を雨ざらしにしていたからか、テープの一部が劣化し隙間ができていた。そこに高速走行の風が吹き込み、一部のテープが屋根から剥がれていたのだ。 この先、福井に到達するまでにはまだまだ高速道路を走らなければならない。 けれどこのままの状態で走り続けたら徐々に剥離が広がり、最終的にはソーラーパネル全体が脱落してしまうかもしれない。 テープの剥がれは今のところ一部分だったので、一般道だったら近くのホームセンターに駆け込み、屋外工事用テープで応急処置をするところだが、今いるところは高速道路のど真ん中。次の出口である清水インターチェンジまでも、まだかなりの距離がある。 一にも二にも避けたいのは、高速道路上に物を落としてしまうことだ。高速道路上の落下物は本当に迷惑なものだ。ただ迷惑なだけではなく、大きな事故につながる危険性も孕んでいる。 そこで僕は、苦渋の決断をした。