“1強状態”になったサッカー日本代表で”成長を感じられない”要素…「選手のポテンシャルを考えると、選択肢が少なすぎる」
層が薄い「左サイドバック」を発掘する必要が
気を抜かずに勝たなければならないなかでも、本大会を見据えると戦力の拡充も図りたい。 冨安健洋、伊藤洋輝に加えて谷口彰悟も負傷し、今回は瀬戸歩夢、板倉滉、町田浩樹といった急造の最終ラインで挑んだが、チャレンジ&カバーなど基本的な守備の連係でミスがありピンチを招いていた。この点においては、いつ負傷者が出るかわからないので、誰が出ても最低限の質を担保できるようにしておかなければならない。 今の日本の強みには異なるシステムを高水準に使い分けられることが挙げられるのだが、こちらも負傷者続出による左サイドバック不在のため停滞している状況だ。これまで日本代表で左サイドバックを経験してきた選手に負傷が続出している不運はあるものの、このポジションの層の薄さは長年の課題。これまでは長友佑都の獅子奮迅の活躍によって、この課題は封印されていたが、点取り屋といわれるストライカーと同様に左サイドバックも枯渇しており、ワールドカップ以後の将来を見据えても発掘・育成に取り組まなければならない。
選択肢が少なすぎる「攻撃面の戦術」
攻撃面でいえば、相変わらず戦術は選手任せで統一感がない。 中国代表戦でいえば、後半32分に伊東純也と橋岡大樹が交代したことによって、久保建英はそれまでより外側にポジションを取るようになった。その7分後の後半39分に久保は交代することになったが、代わって入った前田大然のポジショニングは内側だった。その7分間で中国代表も交代を行っているが、大きな状況の変化はなかったことを踏まえると、久保と前田の交代は戦術的意図というより疲労を考慮した交代といえる。しかし、ポジショニングに大きな違いがあり、それはチームの意図ではなく選手個々の判断ということが推察できる。 鎌田大地の投入には縦関係のポジションチェンジを活性化させたいという戦術的な意図を感じたが、鎌田はいつもどおりプレーしただけで特別に戦術的な指示を受けたようには見えなかった。 森保一監督が主張するように起用する選手で戦術を変えるという方法は、たしかにある。ただし、それでも最低限の決め事はある。アジア最終予選も半分を終えたが、その点における成長は感じられない。選手の起用によって戦術を変えるといっても、人材不足で4バックのシステムが使えない今、ウイングバックに誰を起用するかぐらいしか戦術の手札がないように思える。幸いにして、今回は鎌田大地が違いを見せてくれたため、インサイドハーフで南野拓実、久保建英、鎌田大地の誰を起用するかによっての戦術的な違いも手札としたかもしれない。それでも選手のポテンシャルを考えると、選択肢が少なすぎる。 本大会で勝つことを前提とすると、戦術的な手札の増加が最も急務である。現状の考え方、戦略で通すならば、人も組み合わせもできるだけ多くのパターンを試してふるいにかけたい。 <TEXT/川原宏樹 撮影/Norio Rokukawa> 【川原宏樹】 スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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