景気強いが、インフレ率が高まらない 米、今年3回目の利上げに暗雲か?
米経済が順調に拡大する下、連邦準備制度理事会(FRB)は断続的な金融引き締めを実施しています。16年12月、17年3月、6月にそれぞれ0.25%の利上げを実施した後、この9月にはこれまでの金融緩和で市場から買い上げてきた国債等を徐々に手放す計画を発表する見込みです(以下、バランスシート縮小と表現)。その後も経済が順調に回復していれば、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で今年3回目となる利上げを実施する見込みです。しかしながら、ここへ来てそのシナリオには暗雲が立ち込めています。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
景気が強い割にはインフレ率が高まらないという「謎」
それは景気が強い割にはインフレ率が高まらないという「謎」に直面しているためです。これまでFRBは、(1)失業率が4%台前半まで低下するなど経済が着実に強まっていること、(2)来るべく景気後退に備えて将来の金融緩和手段を確保する必要があること、(3)資産バブルの発生を未然に防ぐこと、などから複数回の利上げを実施してきました。しかしながら、FRBに与えられた重要な責務の一つである「物価の安定」の達成は今ひとつ満足のいく状況にありません。それゆえ、目下のようにインフレ率が目標である2%を下回る状況になると、利上げは正当性されにくくなります。 目下、12月に利上げが再開されるか否かが市場参加者の最大の注目点ですが、以下では、8月16日に発表された7月25-26日開催分のFOMC議事録を読み解くことで、年内の金融政策を予想してみたいと思います。なお、議事録の引用にあたっては、適宜、( )内に筆者の補足を追加しています。 まず従来から伝えられているメッセージの骨子は、一部のFOMC参加者(全17名)が「インフレ率がFRBの目標に近づいていることを(個人消費デフレータという)指標で確認できるまで利上げをしない方がよい」と警鐘を鳴らしている一方で、多くのFOMC参加者が「(2017年に観察されている)物価の弱含みは一時的」として、「インフレ率が中期的に緩やかなペースでFRB目標の2%に上昇する」という見解です。こうした認識の下、金融引き締めが正当化されるというものです。