シャリシャリとした食感が特徴的な冷凍させたシャインマスカットとＯＮＵＭＡの大沼寿彦社長＝最上町志茂

　トレーに並ぶ黄緑の果実。口に含むと、シャーベットのよう。さっぱりとした味わいがいっぱいに広がり、消費者の支持を集めている。 ■返礼品に定着 　最上町向町の「ＯＮＵＭＡ」は瞬間冷凍させたシャインマスカット「夢みるシャインマスカット」を製造・販売している。シャリシャリとした食感、糖度約20度の甘さが特徴だ。2021年の商品開発から3年。町のふるさと納税の返礼品として定着する。同社が皮革製造業の関連会社として設立された経緯を踏まえ、大沼寿彦社長（39）は「新しいことを求めたから今がある。これからも挑戦を続ける」と先を見据える。 　シャインマスカットは粒が大きく酸味が少ない。同社では同町志茂地区のハウス計約1500平方メートルで栽培している。約150本の木があり、父寿一さんが中心になって育てている。収穫後、町内の加工場でマイナス40度で凍らせる。果実は200グラムに分け、真空パック保存している。今季は昨季並みの800パック分の製造を見込む。

　大沼社長は県内の製造業に勤め、営業や品質管理などに従事した。2015年に安全靴の縫製や車のレザーシートの皮革裁断などを手がける家業の大沼産業に入った。同社の先代社長でもある寿一さんがシャインマスカットなどを育てており、農業分野に着目。18年にＯＮＵＭＡを立ち上げた。 　「新しいものを生み出していきたい」と考える中、新型コロナウイルス禍に。外出を控え、家での時間が増えるなど、人々の生活様式が変わる中、贈答用に着目した。通年での販売や保存が利く方法として冷凍加工を選んだ。黒基調のパッケージは中が見える窓付きで、房のイラストが描かれる。一番優れているという意味の「最上」と町名をかけ合わせた「最上の果実が眠ってる」などしゃれを効かせた言葉も並ぶ。 ■限界つくらず 　異業種への挑戦に「やって良かった」と大沼社長。現在はコメ、サクランボ、シャインマスカット入りのアイスも製造を委託し、返礼品のラインアップとして並ぶ。「『無理だ』『やらない』と限界をつくらないことが大切。仮に失敗したとしても、そこから学ぶことで成長や成功につながる」と考えている。

　構想段階だが、シャインマスカットを使ったジュースやアイスの新味の開発にも取り組みたいと思っている。「町にはおいしいものがたくさんある。地元産品を生かした商品を通して町の魅力も多くの人に伝えていく」と情熱を燃やす。 　★ＯＮＵＭＡ　皮革製造業「大沼産業」の関連会社として2018年に設立。夢みるシャインマスカット、アイスの製造・販売などを手がける。資本金300万円。従業員30人。最上町向町1654の107。 　★大沼　寿彦氏（おおぬま・としひこ）　新庄東高、山形大卒業後、製造業勤務を経て、2015年に家業の大沼産業に入る。19年から大沼産業の社長。最上町出身。