能の宝生流と共演、山口鷺流狂言保存会の結成70周年記念事業【山口】
山口鷺(さぎ)流狂言保存会(柏木享会長)の結成70周年記念事業「萩藩の能楽 宝生・鷺」が25日、山口市水の上町の洞春寺で開かれた。江戸時代に萩藩に召し抱えられた狂言の鷺流と能の宝生流が共演。来場者90人がワークショップや実演を通じてその魅力に触れた。 両流派は、江戸時代に萩城での年始や重要な行事で芸を披露してきた。同保存会が今年、結成70周年を迎えることから、宝生流シテ方の佐野玄宜さんや高安流大鼓方の佃良太郎さんら5人と共演。伝統芸能に親しんでもらおうと、実演だけでなくパネルディスカッションとワークショップも組み合わせた。 ワークショップでは、鑑賞者が実際に小鼓をたたき、能の独特な掛け声の違いや扇の使い方も習った。能の楽しみ方として、情景が思い浮かぶよう観客自身が想像力を働かせることが重要だと学んだ。 実演では同保存会が狂言「鬼瓦」を披露。長く都に滞在している大名と家来の太郎冠者(かじゃ)が寺に参拝し鬼瓦を見つける。その瓦が古里に残してきた妻の顔に似ていると泣き出す大名と太郎冠者の掛け合いに会場から大きな笑いが起きていた。 能は波を鼓の調子で表現する波頭を披露。音から波の様子を頭に思い描こうと来場者は聞き入っていた。 狂言で太郎冠者役を演じた米本太郎さん(42)は「ワークショップを交えたのは初の試み。楽しみ方が分からないと思われがちな能と狂言を少しでも身近に感じてもらえれば幸い」と話した。 8月にこども狂言教室に入った長嶺晃丞(こうすけ)君(大歳小4年)は「楽器の音色が良かった。能と狂言で発声方法が違うように感じた。練習してもっとうまくなりたい」と話していた。 10月27日には野田神社能楽堂で同保存会70周年記念公演を予定している。