大阪発 新しい簡易印刷キットで「刷りまっか」?
オリジナルTシャツやトートバッグを手作り
「SURIMACCA」のキットを前にすると、印刷機械とは思えない。赤、青、黄色。フレームを構成する樹脂製のパーツは色彩の鮮やかさと確かな強度を併せ持つ。フレームを組み立てながら、わくわく感が増していく。 中村さんにサンプルを刷ってもらう。絵柄は今年の干支のおサルさんで、印刷する素材は、綿のトートバッグ。事前に製作した版をセット。版にインクを塗り付けて、スキージーと呼ばれる専用のへらをゆっくり滑らせて押さえつける。これでおしまい。版を上げると、長い両手を揺らしておどけるひょうきんなおサルさんが現れた。 「シルクスクリーンでは、1枚の版で必要に応じて1点から数百点まで印刷できます。小学生が学校へ持っていくきんちゃく袋に、お子さんの描いた絵をお母さんが印刷すると、お子さんは大喜び。音楽バンドがオリジナルTシャツを作成し、ライブ会場で手売りして活動資金にしているケースも珍しくありません」(中村さん)
あのモンロー作品はシルクスクリーンで
シルクスクリーンの応用範囲は普段使いの日用品だけではない。海外ではアーティストたちがとんがった芸術作品を世に問う。中村さんによると、シルクスクリーンを駆使した代表的作家は、アンディ・ウォーホルだという。ウォーホルは1960年代から80年代にかけて活躍した米国のアーティストで、ポップアートの旗手。マリリン・モンローの肖像をモチーフにした印象的な作品などで、日本でも人気を博した。 「ウォーホルは、複数の色を刷り合わせる多色刷りのシルクスクリーン技法で新境地を開拓しました。シルクスクリーンの原理はシンプルですが、その分、多くの可能性が眠っています。現代を生きるクリエイターたちがシルクスクリーンと出合って、新しい可能性を切り開いてほしいですね」 出でよ、現代のウォーホル、だ。同社では「SURIMACCA」の今年6月発売を予定。製造費を調達するため、現在クラウド・ファンディング方式で先行予約を募集中だ。キット一式7000円(税別)など、いくつかのコースを設けて支援者を募っている。併せて、台湾での今春拠点開設に向け、準備に余念がない。 同社の基本姿勢はプロアマを問わないクリエイターのサポート。中村さんは「自身が手掛けた作品はとても愛おしい。ものと向き合う大切さを学べます。大阪発の印刷技術で世界のクリエイターたちとの交流を深めていきたい」と意気込んでいる。詳しくはレトロ印刷JAMの公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)