「編集者たちの婚活を聞いて、“住んでいる世界が違う”と思った」『成瀬は天下を取りにいく』作者が「地方の婚活」を描いた“きっかけ”
『成瀬は天下を取りにいく』で2024年の本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの新刊は 『婚活マエストロ』 (10月刊、予約受付中)。結婚の入口である婚活を取り上げた。 【画像】 『成瀬は天下を取りにいく』作者の宮島未奈さんと、『元彼の遺言状』作者の新川帆立さん 一方元弁護士で『元彼の遺言状』『競争の番人』が相次いでドラマ化されるなど次々とヒット作を送り出す新川帆立さんは、 『縁切り上等!―離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル―』 (23年刊)で、結婚の出口ともいうべき離婚を題材にした。 今、大注目のお2人が作品やご自身の経験を通して、結婚について大いに語り合った。 『週刊文春WOMAN2024秋号』 より一部を抜粋・編集し掲載する。 ◆◆◆
なぜ今「婚活」を描くのか
――今回、宮島さんは『婚活マエストロ』で結婚の入口をお書きになりました。なぜ結婚をテーマにしたんでしょうか。 宮島 『婚活マエストロ』に関しては、完全に編集者のオーダーです。担当編集者が婚活パーティーを主催する会社でバイトしていた時の話をしてくれたんですが、それが面白かった。そこでパーティーにフォーカスを当てました。婚活というより、婚活パーティーの話なんです。だから、「新感覚の婚活小説」と言っています。 新川 婚活の話で40歳の男が主人公だと聞いたから、その男が婚活をする話だと思うじゃないですか。ところがそうではなく、婚活パーティーの司会をするというから、そんな切り口思いつかないよって。 宮島 担当編集者がバイトしていた会社は、婚活パーティーで東京を元気にしようとしていたらしいです(笑)。小説に出てくる会社のように、ホームページは古いし、パーティーでは、キーボードで効果音を弾くところまで司会者一人が何もかもやる。それを聞いて、これは運営視点が面白いと思いました。 ――秀逸なのは、健人が婚活マエストロの鏡原さんとサイゼリヤに行って、普段は食べないデザートをオーダーする場面。カップルになる意味の描写が最高でした。 宮島 書いて自分でもびっくりしました。ストーリーもまさかこういう展開になるとは、最後まで書かないとわからなかった。 新川 リズム派の人はそうなんですよ。私もそれです。このキャラはこうだろうなって、書いているうちに自然にわかるんです。 宮島 ライブのような感覚(笑)。1行書いて、次の1行はこれだみたいな感じで書いています。