県内企業も外国人労働者を確保へ カンボジアの日本語学校の取り組みに密着
富山テレビ放送
進む人口減少や働き方改革を背景に空前の人出不足となる中、政府が進めようとしているのが外国人労働者の確保です。 外国人労働者のうち、全国平均で2割、製造業が盛んな県内では4割以上を占める「技能実習生」を巡る制度が「育成就労」と呼ばれる制度に2027年から変わることが今年6月の法改正で決まりました。 従来の「技能実習」では日本での在留期間が最長5年なのに対し、人材の育成・確保を目的とする「育成就労」制度では、スキルによって在留期間が無期限となり、日本の企業側にとっては優秀な人材に長く働いてもらえるメリットがあります。 世界的な人材獲得競争にもインパクトをもたらす日本の制度改定を見据え、若い労働者の輩出国として勢いのあるカンボジアで人材育成に取り組む県内企業を取材しました。 東南アジア経済の大動脈メコン川沿いに高層ビルが建ち並び、近年、急速な発展を遂げるカンボジア。 長く続いた内戦の影響で人口の多くが30歳以下で構成され、若い労働力があふれる一方、都市部と農村部の格差が激しく、職を求めて日本を目指す若者が多いことでも知られています。 *若者は 「日本で働いてお金をもらって家族を助けることができる。生活もきれいなところでできる。」 そうした若者を支援している日本語学校、県内のハウスメーカー丸和が5年前に設立しました。 日本語はもちろん、日本での生活に必要なスキルの習得を目指し、およそ30人が学んでいます。 この日も日本企業の面接試験が行われ、これまで300人以上の実習生を日本へ送り出してきましたが今後、施行される新しい育成就労制度によってその流れが大きく変わるといいます。 *丸和(JCHR日本語学校) 林俊成社長 「いままでは、あいさつができる、先輩たちから可愛がられる、仕事がしやすくなる。どちらかといえばコミュニケーションを中心に日本語教育をしてきたが、日本政府はそれではだめだと。N5という資格を取らせなさいと」 N5とは外国人を対象にした日本語能力試験で日常生活で用いる基本的な文章を理解できるレベル。 従来の技能実習制度では受験する必要はありませんでしたが新たな育成就労制度では必須となります。 これに対応するため、学校では日本人スタッフを増員し、日本語教師の国家資格取得に取り組んでいます。 制度の変更によって日本で働くための条件は厳しくなりますが、働く側にとっては選択肢が増える大きなメリットがあります。 育成就労で来日する外国人は3年間で一定の専門性を習得したあと、「特定技能」の試験に合格することで、最終的に、在留資格の更新に上限が無くなり、事実上の永住が可能になります。 加えて、従来の技能実習では認められなかった勤め先の変更も認められるようになります。 そうした制度変更に伴って丸和では、「育成就労」に加え、その一段上にある「特定技能」を目指す若者も増えると見込んでいます。 *丸和(JCHR日本語学校) 森岡拓也さん 「貧しくて出稼ぎに行きたいという子もいれば、ある程度高校とか大学で勉強して、教育の土台があり、上のステージからスタートしたいという人もでてきている」 首都プノンペンから車でおよそ6時間。世界遺産アンコールワットで知られるシェムリアップ。 丸和は、この地で長年、日本語教育にあたってきた男性とタッグを組み、今月、新たな日本語学校を開校しました。 新たな制度の施行に向け、一段上の「特定技能」を目指す若者を育成するのが狙いです。 *JCHRたくみ日本語訓練学校 今井巧さん 「日本語を喋れる人を育てて、何百人も輩出してきたが、その先の進路を(丸和とタッグを組むまでは)導くことができなかった」 *JCHRたくみ日本語訓練学校 ホール ワッテイさん 「日本語を学んだら何か仕事がある、生活ができる、それでみんな頑張って勉強する」 世界的な人材獲得競争が激化する今、優秀な人材の確保と育成に向けた県内企業が異国の地で奮闘しています。 *丸和 林俊成社長 「年月をかけて(日本語教育の)実績を積んできた今井巧さんとタッグを組むことで、時代にあわせた人をつくりあげることができる。そうすることによってカンボジアの子どもたちにも夢を与えられる。」 *生徒は 「日本で働き日本で暮らしたい」 「頑張ります」 3年後に移行する「育成就労」制度では外国人に長く働いてもらえるメリットが見込まれる反面、働く側の選択で企業を変えることができるようになるため、日本の企業側も人材をつなぎとめる努力が必要になりそうです。
富山テレビ放送