『電波少年』シリーズの「T部長」テレビプロデューサー・土屋敏男、番組が生まれた背景を語る
「何でもいいから1日で企画書を作って持ってこい」
そんなときに3か月限定で30分枠が空きます。急遽、空いた枠だったので、番組の準備期間はひと月半。手が空いているのは、僕だけだったので、担当することになります。そこで誕生したのが『進め! 電波少年』でした。 キャスティングは、松村邦洋と松本明子が、それぞれの事務所から要望が入っていたことから、決まりました。この2人を使えば、各々の事務所にも恩が売れるから、ということもあったと思います。それだけの理由です。僕は事前にこの2人のことはまったく知りませんでした。松本に至っては、後にヤクルトの笘篠賢治選手と結婚する、アイドルの松本典子のほうだと思っていました。顔合わせで「え、誰?」ってびっくりしましたよ(笑) 番組スタートまで時間がないので、「とにかく、何でもいいから1日で企画書を作って持ってこい」と言われます。ここで初めて「何でもいい」という言われ方をしたのです。今までパクリ番組を作って、すべて失敗していることから、とにかく「見たことがない番組」を作ろうと率直に考えました。 しかも、3か月限定の番組ですから、むちゃくちゃやってやれと考えます。「見たことがない番組」を目指すので、普通の番組ならば、ロケの際は、アポを取るはずですが、これでは「見たことがある」ということで、まずアポをとるのをやめようと決めます。そして渋谷のセンター街でチーマーが問題となっていたので、松村を行かせて、彼らを更正させようとする企画や、上野でイラン人が違法のテレホンカードを売っていたので、彼らをテレビ局のADとして雇い、仕事を提供しようということで「イラン人AD募集」というものを考えました。イラン人向けなので、ペルシャ語のナレーションとスーパーでワンコーナーを作りました。 土屋敏男(つちや としお) 1956年生まれ 静岡県出身。日本テレビのプロデューサーとして活動。代表作は『進め!電波少年』(1992~2002)で、最高視聴率30.44%を記録した。44年勤めた日本テレビを2022年9月末で退社。現在、社外アドバイザーとして契約している。 THE CHANGE編集部
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