燃焼試験失敗の「イプシロンS」...爆発までにたどった「詳しい経緯」が明らかに
<「若いロケット技術者の意欲への影響も心配」>
JAXAの井元隆行プロジェクトマネージャは、前回の燃焼試験での爆発原因である「点火装置(イグナイタ、イグブースタ)の一部が熱で溶けて機体内部に飛び散り、圧力容器内の断熱材を損傷した」ことは今回は起きていないと説明し、「後方から爆発したなど前回と共通点もあるので、同じ原因があるのか異なるのか先入観なく調査していきたい」と話した。 今後は、燃焼試験失敗を検証し、調査結果を反映して試験設備の復旧、再々試験を設定する。その結果を踏まえてフライト用モータの制作、ロケットの組み立てと進む。 岡田理事は、「各段階に要する期間を考えると、イプシロンSの今年度中の打ち上げはできない。先週、JAXA内の最高意思決定機関である理事会議でも正式に確認した。イプシロンSが失敗続きだと、若いロケット技術者の意欲への影響も心配だ。彼らにはぜひ早く成功体験をしてもらいたい」と述べた。 なお、イプシロンSと一部共通部分のあるH3ロケットについて、岡田理事は「共通しているのは素材に近いところで、両者の設計はかなり違う。H3は地上試験3回、フライトは8回している。イプシロンSの燃焼異常を反映する必要はない」と改めて強調した。 ■イプシロンSロケット JAXAとIHIエアロスペース(東京都)で共同開発した3段式小型固体燃料ロケット。大型液体燃料ロケット「H3」と固体ロケットブースター(SRB-3)を共通化することでコスト低減、打ち上げ頻度増加を図り、小型衛星打ち上げビジネス参入で国際競争力を高めようとしている。
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)