53歳女性「昔のことを思い出して落ち込む…」寂しさや憂鬱感に襲われる人の体で起きていること
病院に行くほどではないけれど、なんだか感じる体の不調。薬剤師であり調理師、薬膳アドバイザーの資格も持つ道川佳苗さんと、中医学の視点で体を見つめ直し、健やかな暮らしをつくるための「食」を考えましょう。 ◇ ◇ ◇
このような質問をいただきました。53歳女性からの質問です。 「昔のことをよく、思い出してしまいます。落ち込みがひどく、疲れやすい、朝だるい、寂しくなる…などの症状もあります。 なんとなく、不調です。」
冬は落ち込みやすい季節?!
新年が始まり、年末年始の休暇も明け、仕事や学業に再び取り組む人が増えてきたことでしょう。しかし、エンジンがかかったとしても、気分が落ち込んだり、やる気が出なかったり、疲れやすかったりと、心と体の調子が整わない方もいらっしゃるかもしれません。 漢方の視点では、1月は五臓の「腎」が弱まる時期で、自然と恐怖感や驚きやすさが増すとされています。また、現在は最も寒冷な季節であり、冷えによる体調不良が出やすい時期です。冷えることで胃腸の機能が低下し、栄養の吸収が悪くなり、疲労感やだるさの原因となります。中医学では、この時期には体を温める性質の食品や、血液の循環を促進する食品を摂ることが重要とされています。 そこで、これらの状況に対処するために、気分の落ち込みや疲れを和らげるのに役立つ食材やレシピをご紹介します。
落ち込みや不安感、疲れやすさはなぜ起こる?
中医学的には、以下の原因が考えられます。 (1)落ち込みや不安感は「腎」と「血の不足」がポイント 中医学では、五臓という概念があり、冬の季節と深い関わりを持つのは「腎」です。「腎」は生きるためのエネルギーを蓄える場所であり、生殖、成長、老化などと密接に関連しています。腎が弱ると、ビクビクしやすく臆病になる、足腰が弱る、足がむくみ下半身が冷えるなどの症状が現れやすくなります。腎を保護するためには、①身体を冷やさないように防寒対策をし、太陽の光を浴びること②疲労を溜めないように十分な睡眠を確保する③腎を補う食材を摂取することが大切です。 中医学では、血(けつ)は精神的な活動の栄養源とされ、不足すると精神的に不安定になり、不安感、落ち込む、焦るなどの症状が現れます。そのため、血を補う生活習慣として、①夜は早めに寝て、日をまたがないようにする②テレビやスマホなどで目を疲れさせ過ぎないようにする③血を補う食材を摂るなどを心がけることで、精神的な安定が期待できます。 (2)疲れやすさは思い悩むことによる「胃腸機能の低下」が原因 過度に思い悩むなど、長期間のストレスがたまった状態が続くと、胃腸に影響が及び、消化・吸収・運搬の機能が低下します。また、胃腸が弱ることで考えすぎることにもつながります。胃腸の機能が低下すると、「気」や「血」を作り出すことができなくなり、血が不足するために不安症状が起こりやすくなります。胃腸の機能も血の生成に大きく関係しているのです。そのため、胃腸の機能を高める食材や、血の不足を補う食材などを積極的に摂るようにすることが大切です。 生活習慣では、①消化に負担がかからずきちんと吸収できる食事(お粥や鍋料理など)を摂る、②冷たいものや脂っこいものを摂りすぎない、③水分を摂りすぎないなどを心がけましょう。