派閥解消後の自民党総裁選、勝者が直面する「有事」の現実とは?
勝者は「有事」に放り込まれる
誰を総裁に選ぶにせよ、自民党にとっては大きな賭けになる。なにしろ今の日本は微妙な時期にあり、勝者は(出馬会見で河野が言った)「有事」に放り込まれることになる。 次期自民党総裁は退任する岸田からもらった毒まんじゅうを食わねばならない──と言うのは大げさかもしれないが、国内外に山積する難題が次期首相を待ち受けているのは間違いない。中国は台湾海峡や東シナ海、南シナ海で横暴に振る舞い、核兵器の近代化に余念がない。ロシアは中国や北朝鮮との連携を深めている。アメリカでドナルド・トランプが大統領に返り咲けば、世界はますます予測不能で不安定になる。世界経済の先は読めず、アメリカと中国の経済成長には疑問符が付く。 次期首相は与党内を結束させ、国民の信頼を勝ち取り、外交と経済面における岸田の実績をどう生かすかを見極めながら、こうした難題を乗り切らねばならない。 どれも簡単なことではなく、こんな時期に首相になりたがる議員がたくさんいるのは不思議にも思える。だが首尾よくこれらの障害を乗り越えたなら、彼(または彼女)には最高の栄誉が待っている。日本の繁栄と安全を確立した偉大な指導者として、近代日本の歴史に名を刻まれるという栄誉が。 (筆者は20年、安倍元首相の伝記『The Iconoclast』を上梓した)
トバイアス・ハリス(ジャパン・フォーサイト創業者、日本政治研究者)