J3北九州、60位からの逆襲劇。指揮官が“ブレたチームの解決策”を委ねたからこそ、選手たちは逞しく戦い抜いた
経験者が発信して若手がキャッチ
「選手は(シーズンはじめから)間違いなく昇格を目ざしてやってはいたと思う。でも、ただ昇格したいのと、実績がともなって昇格したいのは全然違う。たぶん半信半疑のところはあったと思う」 そう語る増本監督がターニングポイントとして挙げたのが、4月21日のヴァンラーレ八戸戦だ。 「北九州から八戸まで応援に来てくれた方が何人かいらっしゃって、躍動感もない、運動量も少ない、みたいな試合をしてしまった時に、けっこう本気でブーイングしていただいた。その思いをしっかり受け止めようとミーティングのなかで伝えた時から、覚悟がだんだん決まってきた。 リーグが進んでいくなかで、選手たちはさらに強く(昇格したい)気持ちを持ったと思うし。永井、喜山(康平)、大谷(幸輝)とか、いろんなことを経験してきた選手が発信したものを若い選手がキャッチして、本当に覚悟を決めたところはあるんじゃないかと思う」 そして増本監督は、目標の6位以内に届かなかったことについて「自分の経験のなさ」と自責の念にかられる一方で、選手たちに“ブレたチームの解決策”を委ねたからこそ、彼らが逞しくなったとも感じている。 「(最終節で勝利し)選手たちが持っているものを最大限に出せるようになったのは、ある程度委ねて、任せて、選手と話しながら(チームを)作っていけた結果かなと思う」 60位からの逆襲劇。この続きはまた来季、である。 取材・文●浅田真樹(スポーツライター)