『聖剣伝説』最新作で明確になった…? オープンワールド化で「日本産RPG」がつまらなくなりがちな“納得の理由”
2024年8月29日、スクウェア・エニックスの新作『聖剣伝説 ヴィジョンズ オブ マナ』(以下、『聖剣V』)が発売された。 【画像】2024年8月に発売された「聖剣伝説」最新作のプレイ場面。開発は、中国の大手ゲーム開発・運営会社ネットイースの「桜花スタジオ」が担当している 「聖剣伝説」は1991年にゲームボーイで『聖剣伝説~ファイナルファンタジー外伝~』が登場し、1993年にはスーパーファミコンで『聖剣伝説2』、そして1995年に『聖剣伝説3』が発売。当時は特に勢いがあったシリーズだ。 しかし、その後は外伝やリメイク作品は出るものの、ナンバリング作品はなかなか登場しなかった。2006年にPlayStation 2で『聖剣伝説4』がついに発売されたものの、あえなく不評に終わる。 一度勢いを失ったシリーズを救ったのは、リメイク作品として2020年に発売された『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』だった。世界累計出荷・DL販売本数は100万本を突破し、同シリーズは復活を遂げた。その勢いのまま2024年、『聖剣V』が登場したわけだ。 最新作を世間はどう評価したのか。レビュー集積サイト metacritic によると、『聖剣V』の評価は100点中74点(記事執筆時点)とまずまず。特に優れているのはアニメ調のビジュアルと、広めの世界を冒険できるセミオープンワールド、そしてそれなりに整ったアクションRPG要素だろう。 しかし本作には、日本のRPGだからこそ陥った大きな落とし穴がある。
ビジュアルや基本のゲームシステムはそれなりに優れているが…
先述した通り、『聖剣V』のとにかく明るく描写された世界と、アニメ調のかわいらしいキャラクターたちのビジュアルは明確な長所だ。昨今のビデオゲームの流行にも乗れているだろう。 とはいえ、主役級のキャラクターではないNPCは明らかに表情が固く、そもそも口が動かなかったり、省力化が明白である。だが、それでも本作のビジュアルは目を引くクオリティといえる。 昨今は、RPGをオープンワールド化する試みが定番の手法となりつつある。本作もその流れを汲み、セミオープンワールド形式(すべてが地続きではないものの、広いマップがあるシステム)を採用。やや広めのフィールドでの探索が楽しめる。 落ちているアイテムや宝箱は常にヒントが表示されており、思わず拾いたくなるような仕組みに仕上がっている。つい本筋を忘れて寄り道をしてしまった、という人も少なくないはずだ。 また、作品によって例外はあるものの「聖剣伝説」シリーズは、3人の仲間で冒険するシステムがひとつの特徴となっている。『聖剣V』も仲間が一緒に戦うので適度にわちゃわちゃしてくれ、役に立たないこともなく、目立ちすぎることもなく、ほどよい活躍をしてくれる(一部のボスでは例外だが)。シリーズ恒例の「クラスチェンジ」システムなどもあり、バトルシステムもそれなりに整っているといえよう。 こうした点から「良い作品でよかったね」と終えられればよかったのだが、『聖剣V』は日本のRPGが進化するうえでの問題を抱えた作品でもある。