アマゾン、週5日出社を指示 在宅勤務を原則廃止へ
米アマゾン・ドット・コムは、従業員に週5日の出社を求めることにした。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時に在宅勤務体制を取り、2023年5月からは週2日のリモートワークを認めていたが、25年1月2日から原則廃止する。 ■ 「コロナ前、在宅勤務は当たり前ではなかった」 アマゾンのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は従業員宛てのメモで、「新型コロナウイルス発生前の状態に戻り、オフィス勤務を再開することを決めた」と述べた。同氏は「チームメイトが学び、模範を示し、実践し、私たちの文化を強化することがより容易であり、協力やブレインストーミング、発明がよりシンプルで効果的であることを確認した」と説明した。 これにより、同社はオフィス勤務への回帰を率先して進める企業になったと英フィナンシャル・タイムズ(FT)は報じている。米グーグルは従業員に週3日のオフィス出勤を義務付けているが、多くのスタートアップは今も完全なリモートワークを続けている。アマゾンの動きはこれと異なるものになる。 アマゾンは新型コロナ禍で、多くの事務系・技術系従業員を対象とした在宅勤務制を導入したが、23年5月からは週3日の出社を義務付けていた。 ジャシー氏は今回のメモで「パンデミック以前は、週に2日間リモートワークできることは当たり前ではなかった。今後はそれと同じことになる。特別な事情がない限り、またはチームリーダーから例外が認められない限り、週5日オフィスで勤務することが求められる」と述べた。 同氏は米西部ワシントン州シアトルと米東部バージニア州アーリントンにある2つの本社で、フリーアドレス制を廃止し、固定座席制に戻すことも公表した。
■ 組織構造も変更、中間管理職削減でフラット化 勤務体制の変更に合わせて、組織構造も変更する。組織をフラット化するために、階層を減らす。具体的には中間管理職であるマネジャーの数を減らし、構造の簡素化を図る。マネジャーと現場担当者の構成を見直し、現場担当者の比率を現状から15ポイント増やす。25年3月末までに実施するという。 ジャシー氏は、「ここ数年でチームを急速かつ大幅に拡大してきたため、当然ながらマネジャーが増えた」と述べ、「これにより、弊害が生じている。例えば、意思決定会議前の事前会議、さらにその前の会議といった具合に、テーマが進む前に複数のマネジャーがレビューする必要があり、承認プロセスが長引いている」と説明した。 同社は、19年末から21年末までの2年間、急増するEC(電子商取引)需要に対応するため、従業員数を80万人増やし、160万8000人へとほぼ倍増させた。この期間、オフィス職の従業員数は20万人から38万人に増えた。その後、巣ごもり需要が一服し成長が鈍化すると、上場以来最大の整理解雇(リストラ)を進めた。これにより従業員数は24年3月末時点で153万人にまで減った。 だが、コロナ禍で増えすぎた中間管理職によって、組織に階層が増えた。ジャシー氏はこれによる承認プロセスの煩雑化を問題視し、組織改革に着手する。既に社内に「官僚主義メールボックス(Bureaucracy Mailbox)」と呼ぶ目安箱を設けたという。従業員が、不要で過剰なプロセスやルールを幹部に直接報告できるようにした。 ジャシー氏は、「私たちは、世界最大のスタートアップのように運営したいと考えている」と表明。「それは、常に顧客のために発明する情熱と緊急性を持つこと。加えて、迅速な意思決定、機敏性と倹約、深くつながった協力関係、互いに対する共通のコミットメントを持つことを意味する」と説明した。「深くつながった協力関係」については、「発明したり難問題を解決したりする際にはチームメイトと一心同体である必要がある」と強調した。
小久保 重信