コンテンツ産業強化の「司令塔」官民協議会設置へ 制作現場の労働環境整備も
政府は7日に示した新しい資本主義実行計画の改定案で、コンテンツ産業の活性化を新たな成長戦略の目玉の一つに位置付けた。戦略推進の司令塔として、官民協議会を設置する。映画やアニメ、ゲームといったコンテンツの国際競争力を高め、日本経済を牽引する産業として育てるとともに、クリエーターが安心して働ける環境作りにも取り組む。 コンテンツ産業を盛り上げるための官民協議会の設置は初めて。協議会の下には映画に特化した作業部会を設け、具体的な方策を検討する。映画以外の分野でも設ける可能性がある。 政府資料によると、コンテンツ産業の世界市場規模は2019年で約123・6兆円。石油化学や半導体よりも大きい成長産業だ。 日本由来コンテンツの海外売り上げは22年に4・7兆円。日本のアニメや漫画は海外でも大人気だが、映像や音楽の配信、スマートフォン向けゲームなど、分野によっては米国や韓国、中国に後れを取る。 日本発コンテンツの存在感を高めるため、若手クリエーターの海外への派遣や、エンタメ系のスタートアップ(新興企業)の海外進出の後押しを検討する。 賃金未払いや長時間労働など、制作現場の悪しき労働慣行の是正も図る。公正取引委員会がまずは音楽・放送番組分野について年内に調査する。 これらのメニューには、4月の新しい資本主義実現会議に招いた映画監督の是枝裕和氏と山崎貴氏の意見も反映された。官民協議会のメンバーにも業界関係者が入る。 一方で、ある政府関係者は「クリエーターは政治利用されることを懸念して、政治と距離を取ってきた」と指摘する。これを払拭するため、改定案には「官は環境整備を図るが、民のコンテンツ制作には口を出さない」との文言が入った。官民の健全な関係の構築が、日本のコンテンツ産業の競争力強化のカギを握る。(米沢文)