ソウル繁華街でひそかな騒ぎになっている「テイクアウトの飲み物の持ち歩き」
【09月24日 KOREA WAVE】「飲み物を手から離さないつもりです」。20日午前9時、ソウル・明洞(ミョンドン)通り。早朝にもかかわらず、通りには20人ほどの観光客が周囲を見回しながらソウルの風景を楽しんでいた。その中の3分の2ほどが、手にテイクアウトの飲み物を持って歩いていた。名古屋から来たというハナさんもその一人だった。 韓国旅行3日目のハナさんは最近SNSで見た動画の影響で、テイクアウト飲料をどう持ち歩くか悩んでいると話した。日本には韓国ほど持ち帰りカフェがないため、旅行中は毎日テイクアウトの飲み物を楽しんでいたが、その動画を見てからは何となく気味が悪くなったという。ハナさんは「その動画を見て怖くなった」と語り、「できれば飲み物を手から離さずに持ち歩きたい」と話していた。 その動画とは、今月16日にSNSで公開された30秒ほどのもので、台湾のインフルエンサーが撮影した。そこには、明洞の通りにある店の前に設置された飲み物保管台で、男性が複数の飲み物を一口ずつ飲む様子が映っていた。特定の飲み物を2杯手に取り、混ぜて飲む場面もあった。この動画は4日間で150万回以上再生され、話題となった。 これにより、観光客と商店主の間で思わぬ「飲み物戦争」が起きている。商店主たちは、商品を守るためにも飲み物保管台が必要だと主張する一方、衛生問題やゴミの処理に頭を悩ませ、対策に苦慮している様子だった。一方の観光客らは、飲み物を安心して預けられないと感じている。 取材班が問題の動画が撮影された店を訪れたところ、当時使われていた飲み物保管台はすでに運用されていなかった。店の関係者は「事件後、保管台は一時的に閉鎖しており、再開の予定はない」と語った。一部では、動画に映っていた男性が常習犯ではないかという目撃談もあった。近隣で店長を務める女性は「数カ月前にも、うちの店に似たような人が来た」と述べ、「他人の飲み物を飲もうとしたので追い出した」と話していた。 9月10日午後、明洞通りでは、最高気温が35度まで上がる暑さだった。軽装の外国人観光客が秋物の服が飾られたショーウィンドウの前を歩いていた。 明洞の商店主たちは「飲み物や食べ物の保管台は、この場所で商売をするには必須」と説明する。近くには飲食街があり、外国人観光客が自国では珍しいテイクアウト飲料やストリートフードを体験し、手に持ったまま店を訪れるケースが多いからだ。衣類や靴など、飲み物がかかると販売が難しくなる商品を扱う店が多いことも一因だ。 問題は、今回のSNS動画をきっかけに、観光客の間で飲み物保管台に対する抵抗感が広がっていることだ。シンガポールから来た20代の女性観光客は「SNSで見たけど、すごく不快だった」と語り、「今も1杯買って歩き回っているが、店に入るときは絶対に保管台を使わない。ずっと持ち歩く」という。 テイクアウトした冷たいコーヒーを持ち歩いていた日本人(24)も「日本では一部の外資系チェーンを除いて、歩きながら飲み物を飲む文化がない。保管台を見るたびにあの動画を思い出して気持ち悪い」と首を横に振った。 飲み物保管台をゴミ箱代わりに使う人が多いことも問題だ。明洞の衣料品店で働く従業員(27)は「飲み物の保管も重要だが、ゴミを捨てていく人が多く、管理が難しい」と指摘する。靴屋のマネージャーも「食べ物を持ち込まないようにしているが、保管台にこっそり置いていく人もいる。ゴミも大量に出るが、みんな持ち込んでくるので仕方がない」と嘆いていた。 飲み物保管台がなければ、商品が汚される恐れがある。飲み物の水滴や食べ物のソースが商品に染み込むこともあり、損害を請求するのは難しい。 雑貨店を経営する女性(40)は「こぼれそうな食べ物は食べてから入ってもらうか、テイクアウト用の飲み物は棚に置かせない。飲み物をこぼした場合、こちらで拭くが、賠償を求めることはしない」と語った。衣料品販売店で働く女性(24)も「最初に動画を見た時、どうしてそんなことが起きるのか驚いた」と付け加えた。 今回のケースのように保管台に置かれた他人の飲み物を無断で飲む行為は、刑事処罰の対象となる可能性がある。刑法第366条によれば、他人の所有物に対して物理的な力を加え、その効用を消失または減少させた場合、器物損壊罪が成立し、最高で3年以下の懲役または700万ウォン(約70万円)以下の罰金が科される可能性がある。 警察関係者は「他人の飲み物を持ち去れば窃盗罪に該当するが、ストローで飲んで元に戻した場合は器物損壊罪が成立する可能性がある。無断でストローに触れて再び飲めなくした場合、損害を与えたとみなす」と説明した。 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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