八重樫は最強挑戦者に勝てるのか?
「村田諒太第5戦&井上尚弥、八重樫東のダブル世界戦」(9月5日、代々木第二体育館)の前日計量が4日、都内のホテルで行われ、軽量級世界最強ボクサーのローマン・ゴンザレス(27歳、ニカラグア)を挑戦者に迎えるWBC世界フライ級王者、八重樫東(31歳、大橋ジム)他、出場6選手は、全員一回でパスをした。 最初に秤に乗ったのは、八重樫だった。続いてプロ、アマ通じて126戦無敗の2階級王者“ロマゴン”。最強挑戦者はリミットより0.01キロアンダーでクリアした。八重樫のフィジカルトレーニングを担当してきたトレーナーの土居進氏は、その怪物挑戦者の肉体を見て、一瞬、顔をしかめた。「元々、持っているフィジカルの強さなんでしょうね。体が分厚いというか太い。ここ2試合と比べて明らかに体を作ってきています。過去、八重樫さんが戦ってきた選手の中で文字通り最強です。井岡より? 比べ物にもなりません。ただトレーニングで鍛えられた筋肉ではありません。そこは八重樫さんが上回っています。あのボディならば、八重樫さんのパンチが届けば効かすこともできると思います。今回は下半身を中心にトレーニングをしましたし、さらにレベルアップをしています。私は十分、可能性はあると思っています」。 計量を終えた八重樫は、ホテルの廊下に移動すると、持参した数種類もの錠剤や粉末のサプリメントを体に流し込んだ。報道陣に取り囲まれたが、その輪の後ろにいては聞き取れないほど声は小さい。「ここまで来てジタバタしてもしょうがない。数字的にも僕が圧倒的に不利なことは、もう聞き飽きた」。大好きなNBAの元スーパースター、マイケル・ジョーダンのTシャツ姿。それを見てロマゴンのマネージャーからプレゼントされたというマイケル・ジョーダンの黒いリストバントを付けたり外したりしていた。 過去に最強と呼ばれたボクサーと戦った日本人は少なくない。1973年にガッツ石松氏は、敵地で“石の拳”と呼ばれたロベルト・デュランの持つ世界ライト級王座に挑戦したが、10回KO負け。ロイヤル小林氏も、1975年にロマゴンと同じニカラグア出身の“貴公子”アレクシス・アルゲリョのWBA世界フェザー級王座に日本で挑戦したが5回KO負け。八重樫の所属する大橋ジムの大橋秀行会長も、後に22度タイトルを防衛、無敗のまま引退したリカルド・ロペスにWBC世界ストロー級(現ミニマム)のタイトルを奪われたし、WBA世界Sフライ級王者、セレス小林氏も、当時無敗の挑戦者だったアレクサンデル・ムニョスを相手に玉砕した。