アーセナルMFライスがプレミア最高峰の理由 風間八宏「攻守においてある特別な能力がある」
【いるかいないかで、チーム全体も変わってしまう選手】 「もちろん、チームが変わったことが大きなきっかけになったのは間違いないでしょう。ウェストハムとアーセナルではサッカーが異なっていますし、監督から求められているものも違うはずなので、その環境の変化がプレーの幅を変えたとも言えます。 ただ、誰でもライスと同じような成長を遂げられるわけではありません。そこは、彼自身がもともとボールを正確に扱う技術を持ち合わせていたことと、先ほど話したように、守備だけでなく、攻撃のための視野をしっかり持ち合わせていたからこそだと思います。 特に最近のサッカーは、以前と比べて攻守の局面が流動的に動くようになっています。 たとえば、攻撃の局面では全員がボールを受けにいく必要があり、そのためのポジションをとらなければならないうえ、逆に相手ボールになった時には、自分が今いるポジションから守備を始めなければなりません。その連続性のなかでプレーし続けるために、選手は複数のポジションでプレーする能力があるのが当たり前になってきました。 その意味で、ライスは現代サッカーで必要とされるすべての能力を兼ね備えた選手だと言えるでしょう。 一見、不器用そうに見えるかもしれませんが、実は高いボールテクニックを持っていますし、攻守に関与するための視野もある。インターセプトを含めて相手からボールを奪うことを得意としながら、自分がボールを持った時にはほとんど失わず、攻撃の局面でも力を発揮できる。まさに、ミスの少ないオールラウンダーな選手と言えるでしょう。 いるかいないかで、チーム全体も変わってしまう選手。監督にとっても、これ以上はないというタイプの戦力ですね」 10代の頃からプレミアリーグで常にレギュラーとして活躍し続け、着々と進化を遂げているデクラン・ライスは、いま最も目が離せない注目のタレントのひとりだ。 ポジション的にアタッカーほどの派手さはないが、しかしその評価は日に日に増すばかり。プレミアリーグで優勝争いを演じるアーセナルでの活躍ぶりはもちろん、今夏にドイツで開催されるユーロ2024でも、絶対に見逃せない選手と言える。
中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi