2023年“知られざる”世界10大ニュース…日本で注目されなかった世界の重大な出来事は
イギリスメディアによると、この薬の特許は2023年7月に期限を迎える予定だったが、ジョンソン社は薬に小さな変更を加えて特許を延長、独占を続ける判断をした。そうなると、他のメーカーが安価なジェネリック医薬品を作ることができず、所得の低い国が治療薬を手に入れることが難しくなる。
製薬会社が特許を独占することで救えるはずの命が救えなくなってしまうという批判の声が高まり、ジョンソン社は薬の価格を半額以下に引き下げた。さらに、2023年9月に、世界の134の低中所得国で使われる場合に限り、特許を取り下げるとしたため、ついに「ベタキリン」のジェネリック医薬品が作れるようになった。 今回の決定で、多くの人の命が救えるようになる見込みであり、こういった製薬会社の特許の問題が今後改善していくことが期待されている。
■世界最大規模の麻薬大国でケシ栽培が激減…タリバンが取り締まりを強化ナゼ?
10位に入っている「アフガニスタンのケシの生産量が95%減少」も重大な動きといえる。 UNODC=国連薬物犯罪事務所の報告書で明らかになったもので、アフガニスタンでアヘンの原料となるケシの2023年の栽培量が、前の年に比べて推定で95%減少した。
その理由は、アフガニスタンで実権を握るイスラム主義組織タリバンが2022年4月に「麻薬禁止令」を出してケシの栽培を禁止したからだ。アフガニスタンはこれまで世界最大規模の麻薬の製造国で、アヘンの2022年の推定製造量は6200トン、世界の約8割を占めていた。 麻薬の密輸による収入はこれまでタリバンの重要な資金源になっていたといわれているが、ケシの栽培はイスラム教に反するとして「麻薬ゼロ」をうたって取り締まりを強化したのだ。
この取り組み自体は良いことのようにも聞こえるが、これまでケシ栽培で生活していた農家にとっては大打撃となった。農家は小麦の栽培などに移行したが、ケシに比べて小麦の価格が安いため、農民の収入は大幅に減ってしまった。 また、これで世界で違法薬物がなくなるわけではなく、かわりに、クーデターで政情不安となったミャンマーでケシの栽培が急増し、ミャンマーが世界一のアヘン生産国に躍り出た。