センバツ高校野球 青森山田、旋風起こせ きょう京都国際戦 中学時代の恩師がエール /青森
◇「劣勢でもゾンビのように」 第96回選抜高校野球大会第4日の21日に京都国際との初戦を迎える青森山田。ベンチメンバーの半数は系列の青森山田中出身で中学日本一を経験しており、しつこく諦めない野球が信条だ。指導した中学野球部の監督、中條純さん(32)は「後輩たちには最大の目標になる。精いっぱいプレーして」とエールを送る。【江沢雄志】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 2015年から青森山田中を指導し、21、22年に中学の日本選手権連覇に導いた中條さんはある時、他校の監督が全国屈指の強豪、佐倉シニア(千葉)の戦いぶりをこう評するのを聞いて、我が意を得た。「リードされても食い下がってひっくり返す。倒されても倒されても起き上がる姿は、まるでゾンビのようだ」 目指すスタイルを定め、「ゾンビ青森山田」をキャッチフレーズにした。根底にあるのは「最終的に負けないチーム」という理念。何度突き放されても劣勢を挽回する。その意識付けにと、3点を追い掛ける劣勢などを想定した試合形式の練習を取り入れ、ベンチの雰囲気を変える声掛けの仕方や、リスクを取って逆転を狙うタイミングの計り方などを細かく指導した。 ピンチに発揮する精神力と堅実なプレーは、高校生になった選手たちにも息づいている。それを証明したのが昨秋の東北大会初戦、羽黒(山形)戦だ。立役者となったのは橋場公祐(3年)と菊池伊真(2年)だった。ともに、青森山田中で2代続けて全国制覇した当時の主将だ。 延長十回裏に2点差を追い付くも再び2点を勝ち越され、迎えた十三回裏1死二、三塁。「諦めない粘り強さと『勝つんだ』という気持ちの強さは自分たちの原点」と話す橋場主将が起死回生の三塁打で同点に。続く菊池は3球で追い込まれながらもファウルで粘り、10球目をはじき返した中犠飛がサヨナラ打となった。持ち味である粘り強さの真骨頂と言える一打を、菊池は「橋場さんが同点にしてくれたので、最低限犠飛を打てればよかった」と冷静に振り返る。 窮地で気持ちが切れなかったのは「焦らずチーム全員が自分の役割を果たせば流れは来る」という中学時代の教えがあったから。それ以降チームは全勝で東北大会を制した。明治神宮大会は初戦で星稜(石川)に1点差で惜敗。けがもあり、この試合は無安打に終わった菊池は「チームメートが結果を出してくれて来られた甲子園。秋の分まで活躍したい」とセンバツで雪辱を期す。中3で選ばれたU15(15歳以下)日本代表でともに戦った健大高崎(群馬)のエース、佐藤龍月(りゅうが)(2年)ら当時の仲間との対戦にも心を躍らせる。 「高校から自分たちで考えて野球をするためにも、中学ではなるべく選手たちの引き出しを増やせるよう、細かく指導している」と話す中條さん。その教えは確かに受け継がれ、高校チームの兜森崇朗監督(44)も「試合中のベンチの雰囲気づくりはとてもうまい」と太鼓判を押す。へこたれない選手たちは、甲子園でも持ち前の「ゾンビ野球」で頂点を目指す。