トランプ氏に祝意の中東諸国、ガザ早期停戦の「ディール」に期待
米大統領選で勝利したトランプ氏に対し、中東各国は6日、相次いで祝意を表明した。パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘が続く中、中東諸国にはトランプ氏が早期停戦に向け「ディール」(取引)を結ぶことへの期待感があるとみられる。 ガザ地区の停戦交渉を仲介しているエジプトのシシ大統領は6日、トランプ氏に電話し、「地域の安定と平和に貢献するため、新たな任期中も引き続き協力していく」との意思を強調した。同じく仲介役を務めるカタールのタミム首長もX(ツイッター)で「地域の安全と安定に向けて協力するのを楽しみにしている」との声明を出した。 トランプ氏は選挙期間中、イスラエルのネタニヤフ首相に対し、もし自分が当選したら来年1月の就任までにガザ地区の戦闘を終わらせるよう伝えたとされる。中東諸国では、紛争に巻き込まれるのを避けたいトランプ氏が早期停戦を優先し、イスラエルに一定の圧力をかけるとの見方もある。 ネタニヤフ氏もトランプ氏の勝利を歓迎している。強烈な親イスラエルの立場で知られるトランプ政権下なら、自国に有利な形で停戦交渉や戦後のガザ統治を進められるとの期待があるからだ。ネタニヤフ氏は6日、いち早くトランプ氏に電話し、イスラエルの安全保障のため協力することで一致。ハマスを支援するイランの脅威についても協議した。 ただ、パレスチナ側には、トランプ氏の極端なイスラエル支持への警戒感も強い。 トランプ氏は前回の任期中だった2020年、パレスチナ側に大幅な妥協を迫る中東和平案を公表している。この案でトランプ氏はパレスチナ国家の樹立を認めつつも、「国際法違反」とされるイスラエルのパレスチナ自治区への入植を容認し、パレスチナが「将来の首都」と位置づける東エルサレムの大半をイスラエルに帰属させることを求めた。 ハマスは6日の声明で、トランプ氏に対して早期停戦の実現とともに、エルサレムを首都としたパレスチナ国家の独立など従来の要求も改めて強調。「米国の新政権がパレスチナの人々や権利、大義にどう対応するかによって我々の立場を決める」と慎重姿勢を示した。 一方、米国の同盟国・サウジアラビアで実権を握るムハンマド皇太子も6日、トランプ氏に電話し、2国間の「歴史的で戦略的な関係」をいっそう強化させたい考えを伝えた。2人は親密な関係とされ、ムハンマド氏もトランプ氏の復帰を歓迎しているとみられる。 サウジはガザの戦闘が始まるまでは、イスラエルとの国交を樹立する見返りに米国と安全保障や原子力分野で協力を強める協定の交渉を進めていた。 トランプ氏は在任中の20年、アラブ首長国連邦など一部のアラブ諸国がイスラエルと国交を樹立する「アブラハム合意」を仲介して成立させた実績を持つ。ガザ地区の戦闘を受け、サウジはイスラエル抜きでの協定成立を目指す方向にかじを切ったとされるが、ガザ停戦が実現すれば、いずれイスラエルとの交渉が再開する可能性もある。【カイロ金子淳】