【NBA】サンズを救う即戦力ルーキー、ライアン・ダンがクリッパーズ相手の逆転勝利を演出「すべてのポゼッションで戦う」
「シュート力には期待できない」との評価を覆す活躍
現地10月31日、サンズはクリッパーズを相手に125-119で勝利した。前半終了時点で52-70、最大21点のビハインドを背負いながら後半を73-49と圧倒しての逆転劇で、これでチームは3連勝。クリッパーズとレイカーズと2回ずつ、マーベリックスと1回と開幕から強敵との対戦が続く中での4勝1敗は、非常に良いスタートと言える。 デビン・ブッカーの40得点という数字が目立つが、チーム全体で39本中18本、後半に限れば23本中12本と高確率で決めた3ポイントシュートが大きかった。ブッカーとケビン・デュラントのシュート力は言うまでもないが、チームでボールがよく回り、エクストラパスをコーナーでのキャッチ&シュートに繋げ、得点期待値の高い機会をチームで数多く作り出し、最後を託された選手が確実に決めたことが逆転の秘訣となった。 そのフィニッシュを決めたのはライアン・ダンとロイス・オニールだ。シックスマンのオニールは6本中5本成功。『3&D』として実績のある彼の活躍に驚きはないが、ルーキーのダンの活躍はサンズにとってうれしいサプライズとなっている。 ダンは今年のドラフトで1巡目28位指名を受けた203cmのフォワード。サイズとフットワークの良さを生かしたペリメーターでのディフェンスを得意とする一方で、シュート力は期待できないとの評価だった。それでも得点を取る選手ならいくらでもいるサンズは守備のハードワーカーとしてダンを獲得した。 開幕ローテーション入りを果たしたダンは、強豪との対戦ばかりが続く中で、レブロン・ジェームズ、ジェームズ・ハーデン、ルカ・ドンチッチのマークを担当。執拗なマークで相手のエースのリズムを狂わせる彼は、ディフェンスにずっと難を抱えていたサンズにとって即戦力となった。 そして、期待できないとされていたオフェンスでも活躍している。ブラッドリー・ビールが手首のケガで欠場となると、ダンは先発に抜擢された。最初に先発したマブス戦では3本の3ポイントシュートを決めて13得点。2度目の先発となった今回のクリッパーズ戦では、劣勢だった第2クォーターにダンは3本の3ポイントシュートを決めてチームに勢いを与え、後半の逆襲の流れを作った。彼が試合にもたらしたインパクトは、16得点4リバウンドというスタッツでは測れない。 「ハーフタイムのロッカールームで交わされた言葉は『戦え、戦え、戦え、戦え』だった」と試合後のダンは語る。「向こうはハッスルしてアグレッシブにプレーしているのに、僕たちは集中できておらずターンオーバーばかりで、死んでいるみたいだった。後半になって何が変わったかと言えば、一歩も退かなかったことだ。すべてのポゼッションで戦い続けた。それが僕たちにとって一番大事なことだった」 後半のダンは得点のペースを落としたが、それでも第4クォーター序盤、サンズにこの試合初めてのリードをもたらしたのは彼の3ポイントシュートだった。左コーナーのオニールが3ポイントシュートを打つと見せかけてドリブルし、その瞬間に逆サイドのコーナーへと走ったダンへパスを送る。クリッパーズの守備を振り回したワイドオープンのチャンスを確実に決めた一発だった。「みんなが素晴らしいチャンスを作ってくれた。僕としては躊躇なく打つこと、決めることしか考えていなかった」とダンは言う。 ダンのような選手が守備でハードワークすることで、デュラントやブッカーのシュート力はより効果的に発揮される。ケガの多いビールが欠場しても、彼はビールとは違う形でその穴を埋められる。昨シーズンはエリック・ゴードンがやっていた役割を、ルーキーのダンがより良い形でこなしているのは驚くばかりだ。 経験の浅い選手だけに、この好調をどうやって維持していくかが今後の課題となるが、少なくともここ数試合のダンは『第2のミケル・ブリッジズ』となる可能性さえ感じさせる。今年のドラフト組は低調と言われるが、少なくともサンズに限ってはダンがチームを救う即戦力となっている。