地震直前、受験生の孫励ます 77歳の母犠牲「親孝行したかった」叶わなかった家族旅行
嘉子さんを病院に運び、帰宅したのは午後11時半ごろ。「だめやった」。宏樹さんが伝えると、子供たちは声を上げて泣いた。近くの火葬場が被災して使えず、自宅から遠く離れた石川県小松市の斎場で嘉子さんを見送ったのは、約2週間後の1月15日だった。
その後受験を控えた子供たちは同県白山市へ集団避難。困難な環境を乗り越え、志望校に合格した。集団避難から戻った2人は新しい生活をスタートさせたが、時折「おばあちゃんのカレーが食べたい」とつぶやく。
嘉子さんの生前、孫2人の受験が終われば「一家みんなで旅行に行こう」と話していた。「親孝行したかった」(宏樹さん)という思いから計画を立てたが、もう実現は不可能になった。
地震から半年。宏樹さんは嘉子さんを思うたび「こんなこともしておけばよかった」と後悔が募る。それでも「一人ではなく家族がいる。何とかやっていくしかない」とここ輪島で家族で精いっぱい生きる姿を亡き母に見せたいと思っている。