リーグワン王者・BL東京に根付く、タレントを発掘し強化するサイクル。リーグ全勝・埼玉の人を育てる風土と仕組み
プロになれなかった才能を日本に迎え入れ、引き上げ、個別に強化
堀江が前身の三洋電機時代から根付くカルチャーに育まれ、カルチャーを育む側に回るなか、クラブは未来の一流を海の向こうからも探すようになる。 今度の決勝でも先発したベン・ガンター、ジャック・コーネルセン、ディラン・ライリーのオーストラリア出身トリオは、いずれも当初は練習生だった。 「その時代のオーストラリアでは好選手が多かったものの、スーパーラグビー(国際リーグ)に挑めるのは毎年一定数だけ」とは、あるクラブ首脳。プロになりたくてもなれなかった才能を日本に迎え入れ、引き上げ、個別に強化した。 計画を主導したのはロビー・ディーンズ ヘッドコーチ、さらには3人と同郷の吉浦ケインS&Cコーチである。 当初タックルが不得手だったコーネルセンには、サイズアップを命じて堅陣を支える名黒子に昇華。パワフルなガンターには、栄養摂取に気を付けさせて機動力アップを求め、リーグ屈指のボールハンターに育てた。 大きくて速いのが魅力のライリーは、試合終盤までトップスピードを出すことを主眼に置いて鍛えた。堀江、稲垣啓太ら日本代表勢の揃う戦力とかみ合った末、リーグワンの初代トライ王となった。 ライリーは感謝する。 「ワイルドナイツには若手、国際経験の豊富な選手が、日本人と外国人の両方がいるといういい文化がある。チーム内でグループを作り、ベテランのアドバイスを若手が生かしています」
新人にはチームスタイルの「研修」を座学で実施
国内の新人へも、ワイルドナイツはチームスタイルの「研修」を施す。 この取り組みを始めたのは2019年頃からで、その年に着任した金澤篤、ホラニ龍コリニアシ両アシスタントコーチが攻防のシステムを座学で伝えた。 従前の「見て学べ」からの脱却。2020年度(2021年)のトップリーグ最終年度では竹山晃暉が、昨季のリーグワンでは長田智希が新人賞に輝いた。長田は述べる。 「最初は(チームに)慣れるのに必死でしたが、その取り組みがあったことで早く慣れることができた部分はあったかもしれないです」