お金もない、相談もできない…病院に行けない「未受診妊婦」の実態 母子ともに危険な“飛び込み出産”当事者に聞く
「生理が3カ月以上来なくて。本当に妊娠だったら貯金もないし、生活収入が断たれるし…」。妊娠したにも関わらず、一度も病院に行かない女性たちのことを「未受診妊婦」と呼ぶ。リスクがあるにも関わらず、様々な理由があり、妊娠期間中に産婦人科などの検診を受けられない妊婦のことだ。 【映像】のぞみさんが未受診妊婦になった理由 風俗で働いていたのぞみさんは「相手が明確にはわからない」子を妊娠。「その日暮らしをしていた関係上、国民保険にも入っていないので、これで本当に妊娠だったら貯金もないし、ずっと頭の中で『どうしよう、どうしよう』とぐるぐるしていた」と悩み続けた。ようやく検査した時に分かった結果は陽性。すでに生理が来なくなって6カ月以上が経過しており、中絶できる期間は過ぎていた。 「友だちといて別れた後、漫画喫茶に入ったら、ちょっとずつお腹が間隔的に痛くなってきて、救急車に連れて行かれた」。いわゆる“飛び込み出産”だ。赤ちゃんの成長具合もわからず、そのまま緊急で帝王切開。幸い、のぞみさんの場合は母子ともに健康で、無事に男児を出産した。未受診妊婦の多くが、このように飛び込み出産をするケースが多い。これまで100人以上の未受診妊婦に携わった大阪府・千船病院の岡田十三医師によると「妊娠中の管理が全くされていないので、母体の血圧が高い方が多い。あとは感染症を持っている方もデータから多いことがわかっている。赤ちゃんの状態、週数がまずわからないので、一番医療機関側として不安な点だ」という。 赤ちゃんを危険にさらす行為に対しては“野良妊婦”と呼ばれ、批判的な声もある。ただ、経済的理由や虐待などから受診しない、もしくは受診できない人がいるのも現実だ。『ABEMA Prime』に出演したのぞみさんは、出産した男児を特別養子縁組に託したといい、その後は数カ月に1回、成長の過程を見せてもらっているという。「愛情が全く芽生えなかったわけじゃない。こんな感じで今成長しているんだという感じの気持ちはある」とした上で、「今のご時世、シングルマザーの方も多いけど、1人で育てるよりは夫婦揃って、お父さんもいる状態で育ててもらう方がいい。私の生活が安定しているわけじゃなかったので、傷つけてしまったりとか、我慢させちゃったりとか、そういうのが嫌だった。家庭を知ってもらうという意味でも、特別養子縁組を私は選んだ」と語った。 山王ウィメンズ&キッズクリニック大森の高橋怜奈院長は、のぞみさんのような未受診妊婦がいる理由について「経済面が多いこともあるが、妊娠していることに気づいていない方も結構多い。30何週を超えると動いたりするので、なんとなく気づいたり『いるんだな』とわかるが、やはり中絶できる週を過ぎてから気づく。そうした後に どうしようと悩んで、結局どこにも相談できない方が多い」と、妊娠の事実を把握することの遅れがあると指摘した。また「出血があったらイコール生理だと思っている。医学的には出血があってもイコール生理ではなくて、着床出血といって妊娠したばかりの時も出血がある。生理不順の人は、生理は来ないけどこのくらいはあると思って、気づいたらもう20何週になっていた方も実際はすごく多い」と、妊娠への理解を深める必要性を説いていた。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部