なぜ今ベーシックインカムなのか 第3回:財源はあるのか 同志社大学・山森亮教授
■「配当/政府紙幣」で賄う方法
他方、租税とは切り離してベーシックインカムを考える発想も古くから議論されてきた。イギリスの経済学者ジェイムズ・ミードは、生涯ベーシックインカムの提唱者であり続けたが、彼は社会化された資本からの配当によって、ベーシックインカムを給付しようと考えていた。具体例としては、ベーシックインカム給付のための基金を創設し、そこに株式会社が発行株式の何%かに等しい額を納付するという形が考えられる。したがって彼はベーシックインカムのことを社会配当と呼んでいた。 この考え方の背景にあるのは、社会の富は現時点での社会の構成員の労働によってのみ生み出されるのではなく、過去の世代の努力に負っているという哲学である。仮に私たちの富の30%は現在の活動によって生み出されており、残りの70%は過去の世代から引き継いでいるとしよう。その場合、富の30%は賃金などの形で現在を生きる個々人の貢献に応じて分配され、残りの70%は現在の社会の構成員全てに等しくその配当を受ける権利があるとされる。それがベーシックインカムだというのだ。 また政府紙幣や並行通貨、地域通貨など、貨幣改革と結びつけてベーシックインカムの給付を論ずる議論もある。
■結論
結論をいえば、ベーシックインカムを可能にするお金の流れを作ることは、理論的には可能である。問題はむしろ、そのための合意を得ることができるかどうか、いいかえれば多くのひとがベーシックインカムを望ましいと思うのかどうか、である。ベーシックインカムの実現可能性に疑問符がつくとすれば、それは経済学的なものというよりは、むしろ心理学的、倫理学的、あるいは政治学的な問題だ。