「筑後川の鵜飼い」九州北部豪雨を境に計画通りに漁できず…出前ショーや運航見直しで存続に奮闘
福岡、大分両県に大きな被害が出た2017年の九州北部豪雨から7月5日で7年になる。筑後川では大量の流木や土砂が流れ込んだ影響で、川底が浅くなるなど環境が変化。福岡県朝倉市で観光の目玉として行われている鵜飼いは、計画通りに漁ができない状態が続いている。伝統漁をどうやって未来に残していくのか。関係者は新たな取り組みを始めている。(白井貴久) 【写真】筑後川で始まった鵜飼い
16日の福岡市のベスト電器スタジアム。サッカーJ1・アビスパ福岡の試合を前に、広場で鵜飼いの実演があった。軽トラックの荷台に設置された透明の水槽には生きたアユが泳いでおり、魚影を目がけて鵜が潜る。魚をくわえて上がってくると、集まったサポーターから歓声が上がった。
鵜飼いが行われている原鶴温泉旅館協同組合(福岡県朝倉市)がこの日から始めた「出前ウカイショー」。イベント会場などで年度内に6回行う予定で、鵜匠の臼井信郎さん(39)は「少しでも興味を持って原鶴温泉に来てほしい」と話す。
筑後川の鵜飼いは、アユ漁の解禁に合わせて行われ、今年は5月20日から9月1日まで(6月24日~7月11日は休業)を予定。船頭と、鵜を操る鵜匠が、2人1組で小舟に乗って行い、乗客は屋形船で一緒に川を下り、漁の様子を間近で見ることができる。
夏の風物詩とも言える光景だが、17年の九州北部豪雨以降、苦境が続いている。
翌18年は、川の土砂を撤去して臨んだが、再びの豪雨で中断。コロナ禍も重なって22年に再開したものの、23年は7月に大雨に見舞われて中断し、そのままシーズンを終えた。関係者は「大雨が降ると、土砂が流入しやすくなった。川底が浅くなり、屋形船が出せなくなってしまう。九州北部豪雨がターニングポイントになった」と振り返る。
不安定な運航状況が続くと屋形船の採算を維持するのは難しく、屋形船の料金から得ている鵜匠の収入も減ってしまう。組合内には「今年の実施は厳しいのでは」という意見があったという。井上善博組合長(55)は「組合としても伝統を残したいという思いはある。存続に向けて一肌脱ぐ必要があるという結論になった」と明かす。