『杉咲花の撮休』― 日本映画界をけん引する監督陣が「杉咲花」をお題に大喜利!?
見どころは、上白石萌歌の弾き語りや俳優同士の恋愛事情、杉咲花と“杉咲雪”の競演!?
今泉と三宅は過去にも同シリーズに参加しているが、松居は今回が初。特典映像として収録された杉咲と3監督による座談会によれば、監督同士の交流は以前からあったものの、いずれも杉咲とは初タッグとなる。監督陣は互いの企画を事前にすり合わせることなく、それぞれが思い描く“杉咲花”のパブリックなイメージを基に、これまでのシリーズでまだ誰も試していない切り口を探りながら、オリジナリティ溢れる6つのストーリーを生み出した。
例えば、松居大悟が監督・脚本を務めた第1話「丸いもの」では、自宅の洗濯機が故障していることに気付いた杉咲が、仕方なくコインランドリーに出向くも千円札しか手元になく、両替をしようと店の外に出たところ、弾き語りをする路上ミュージシャン(上白石萌歌)に出くわし、ついその千円でCDを買ってしまう。杉咲は、コインランドリーに居合わせた客(松浦祐也)に小銭を借りようと試みるが、手順を誤り、思いもよらない展開が待ち受ける。
今泉力哉が監督・脚本を手掛けた第3話「両想いはどうでも」では、杉咲が以前から好意を寄せている相手(泉澤祐希)の家に行き、正式に交際を始めるかどうかを話し合う。だが、「このタイミングでの交際は控えた方がいいのでは?」と気遣い、煮え切らない態度を取る相手にしびれを切らした杉咲は、二人でマネージャーのもとへと交際許可をもらいに行く。ところが、マネージャーから思わぬ打ち明け話を聞き、それどころではなくなってしまう。
和田清人と三宅唱が二人で脚本を書き、三宅が監督した第5話「従姉妹」と最終話「五年前の話」は、他の話とは構成が大きく異なり、2つの物語が地続きとなっている。杉咲と同棲している恋人(坂東龍汰)と、俳優仲間の河野緑(橋本愛)がいずれの話にも登場するが、「従姉妹」では杉咲が一人二役で従姉妹役も演じ、対話シーンの映像トリックも存分に楽しめる。最終話で回想シーンがモノクロで表現されるのも、過去シリーズにはないアイデアだ。 「明日、撮休になりました」と、局プロデューサー役の松尾諭が、杉咲とマネージャー役の菊池亜希子のもとへ告げに来る場面が全話の冒頭に挿し込まれるのも、同シリーズならではの特徴だ。監督・今泉力哉×脚本・山名宏和によるユーモラスな寸劇や、杉咲が覗いたカレイドスコープの中に、さまざまな表情の杉咲花が無数に映し出されるオープニング映像。そして、まるで使い捨てカメラで撮ったかのような質感の、“エモい”メイキング写真が次から次へと流れてくる各話のエンディング映像と共に、本作の見どころの一つとなっている。