レアアース供給網の中国支配、米国と同盟国に打破できるか疑念
(ブルームバーグ): ハイテク産業に不可欠なレアアース(希土類)のグローバル供給における中国の支配を打ち破ろうとする工場が、米国で計画されている。
テキサス州ヒューストンから数時間離れたダウ・ケミカルのプラントに近い一角で着工予定だが、たとえ着工したとしても、圧倒的な中国支配の現状を変えることは難しそうだ。中国はレアアース生産の約7割、製錬の9割超を握っている。
オーストラリアのライナスが建設するテキサス工場には、米国およびその主要同盟国におけるレアアースの生産と製錬に対して約束された数十億ドル規模の補助金・融資の一部が充てられる。
60ヘクタール(0.6平方キロメートル)の敷地に関し、ライナスは米国防総省との契約で3億ドル(約420億円)余りを獲得。 計画通りに進めば、2年後にレアアースの製錬工場が稼働することになる。
米国とその同盟国では、国家安全保障がこうしたプログラムを推進させる主因だ。だが、2022年以降の価格低迷が足かせとなり、政府に守られた中国企業に対抗できるサプライチェーンに発展させることができるかを巡り疑念が生じている。
米国唯一のレアアース鉱山を所有し、テキサス州で磁石工場を建設中のMPマテリアルズのジェームズ・リティンスキー最高経営責任者(CEO)は先月、「このような市場環境により、ほんの2、3年前に期待されていたプロジェクトのほとんどが頓挫してしまった」と業績説明の電話会議で指摘。
「各国政府の取り組みや投資にもかかわらず、サプライチェーンの大半は依然として中国が支配している」と述べた。
中国政府は昨年末、 市場における自国の支配的な地位を強調するかのようにレアアース関連技術に対する規制強化を発表。中国国外での関連事業の発展を困難にすることが狙いだ。
米国防総省のテイラーケール次官補(産業基盤政策担当)は今年、「27年までに米国の防衛要件を全て満たすことができる鉱山から磁石に至る持続可能なサプライチェーンを構築する」と表明し、ライナスのテキサス工場が稼働すれば、同社は「レアアース酸化物の世界供給量の約25%を生産する」と語っていた。