毘沙門のイチョウ(青森・八戸市)、北東側の樹勢回復 ナラタケ菌克服「新しい枝動き出している」
ナラタケ菌により樹勢が弱まり青森県樹木医会が治療を続けてきた八戸市田向の毘沙門公園にある「毘沙門のイチョウ」について、市は29日、県樹木医会理事の釜渕一壽さん(62)=田子町=による公開診断を現地で行った。南側の大きな枝など全体の約8割は枯死しており再生不可能だが、約2割の北東側部分は樹勢が回復、ナラタケ菌を克服しており、釜渕さんは「再生に向け新しい枝が動き出している」と語った。 県樹木医会が2016年度から進めてきた薬剤による殺菌や土壌改良など9年間の治療が実った。市は本年度で治療を一度休止。来年度以降は殺菌や養生管理をせず自立できるかどうか、八戸造園建設業協会が経過を観察する。 イチョウはかつて「地域のご神木」として住民に親しまれていた。土地区画整理事業に伴う道路整備のため05年度、130メートル離れた場所から現在地に移植された。当時、推定樹齢550年、高さ21メートルだった。08年度に枯損が目立つようになり造園関係者が手当てを開始。16年度から県樹木医会が治療を続けてきた。 今年は過去9年間で最も葉がよく茂り、葉の色も健全な状態に近く、多くの実をつけた。一つの根株から幹が3本出ており、高さ約10メートルの部分は枯死しているが、北東側は健全に生育、高さ約6メートルまで伸びた。枯れた部分は切除が必要で樹形縮小は免れないが、命をつなぐことが可能という。 公開診断の冒頭、釜渕さんは、治療を実施してきた青森市の樹木医・斎藤嘉次雄さん(77)について「体力低下などで昨年度、樹木治療の第一戦から引退した」と説明した。本年度も斎藤さんの処方箋に基づき治療を進めているという。 釜渕さんは「イチョウが再生を続けていけるよう、地域の関係者にさらに力添えをいただきたい」と話した。