どうして東京都で一番? 世界遺産の島・小笠原が“高齢化率最低”という謎
7月17日、東京台東区の国立西洋美術館が、ユネスコの世界遺産に登録されることが決まりました。早くも国立西洋美術館に多くの人が訪れています。地元・台東区をはじめ東京都も世界遺産決定の朗報に沸き立っていますが、東京都にはもうひとつ世界遺産があります。それが2011(平成23)年に自然遺産に登録された小笠原諸島です。 小笠原諸島は、都心部から1000キロメートル以上も離れています。島には空港がないため、アクセス手段は船しかありません。唯一の交通手段である船も1週間に一便しか運行されておらず、所要時間も約24時間。気軽に足を運ぶことはできません。 そんな絶海の孤島・小笠原諸島は、行政区域的には全島が小笠原村に属しています。その小笠原村は、意外にも東京都内の市町村で高齢化率がもっとも低い自治体になっています。過疎化していると思われがちな離島・小笠原は、なぜ高齢化していないのでしょうか?
高齢化率を下げる理由? 離島小笠原にやってくる若い人材たち
今般、地方都市は人口減少が顕著になり、少子高齢化が問題になっています。人口減少の波は、東京都にも及んでいます。すでに多摩地区のいくつかの市町村では、人口が減少に転じています。島嶼部では、人口減少の傾向が顕著に出ています。離島には大学などがなく、大きな産業もありません。そのため、進学や就職を機に若者が島を出ていってしまうために、どうしても高齢者だけが島に残り、結果として高齢化率が高くなってしまうのです。 そんな離島では当たり前の現象が、小笠原村では起きていません。ほかの島々と事情が異なっているのです。小笠原村の高齢化率は14.9%。これは、都内の市町村でもっとも低い高齢化率です。小笠原村が、ほかの離島のように高齢化が深刻化していないのは、なぜなのでしょうか? 東京都小笠原村政策企画室は、小笠原村の高齢化率が低い「明確な要因はわかっていません」としながらも、考えられる理由を2つ挙げています。ひとつは、「毎年100人前後の若い人たちがリゾートバイトのような形で来島すること」。リゾートバイトといっても、夏休みだけの短期間なものだけではありません。5年以上という長期間にわたって働く人もいます。 そして、もうひとつの要因として考えられるのが、「国や東京都などの出先機関で働く人たちの存在」です。現在、島の人口は約2500人ですが、そのうち出先機関で働く職員と家族は約500人。職員の年齢は20代~40代になりますが、2~3年単位で新しい職員が交代で赴任してきます。「そのため、常に20~40代が500人、リゾートバイトの人たちも合わせると600人前後の若い人たちが島に居住していることになります。これが高齢化率を低くしている要因と考えています」と同政策企画室は話します。