東京一極集中が加速!? 万博のウラで音楽関係者が危機感…ライブの“大阪飛ばし”の現実味
異例の声明に注目
関西の音楽関係者が危機感を募らせている。首都圏で大規模アリーナ会場の開業が相次ぐ一方、関西では適切な儲けを出せる会場が少なく、今後、ライブの“大阪飛ばし”が起きるかもしれないからだ。先日、異例の声明を出した関西のプロモーターは、現状について「関西で公演するメリットが薄く、せっかく建てたハコの稼働率が落ちかねない」と話す。一体、何が起こっているのか。 【写真】そもそも間に合うのか? 数か月前の時点で大屋根は"足”しかできていなかった大阪・関西万博会場
2月中旬、一般社団法人「コンサートプロモーターズ協会 関西支部会」の声明がネットで注目を集めた。 「今後の大阪、ひいては関西のエンタテインメントおよび文化事業発展の為、現実的且つ確実な建設計画に着手頂きたいと切に訴えます」とする声明。大阪を中心とした関西のアリーナ会場不足、とりわけ会場の数・キャパシティともに首都圏に立ち遅れていることを伝えている。 さらに、声明では「大型エンタテインメント・コンテンツのほぼ全てが東京ベース発信・主導とされることから、同等の採算規模である10,000席規模公演を関西地区での開催と比べた場合、移動交通費、宿泊費、運送費等の経費増により不採算に陥ります」と説明。昨今の物価高で、関西開催のハードル自体が上がっていると訴えた。 関西で開業予定の大型アリーナ施設の現状はどうなっているのか。吹田市の万博記念公園に建設予定の固定客席1万3400席のものが最大で、29年1月の開業を目指す。また、大阪市内の森ノ宮に28年開業予定の1万席規模のアリーナ計画があり、来年春には神戸市の新港突堤に最大1万人収容の「GLION ARENA KOBE」がオープン予定だ。
キャパシティの点では見劣り
だが、これでも、採算の取れるライブを関西で開催することは難しいという。「コンサートプロモーターズ協会 関西支部会」の担当者はこう明かす。 「最大収容人員といっても、ライブでは機材やステージを配置しますから実際の客席数はぐっと少なくなります。1万人収容といっても実際の客入りは数千人となるでしょう。現状では、首都圏の大規模会場と比べると、キャパシティの点では見劣りする会場が多いです」 関西のライブ会場の代表格といえば大阪城ホールで、最大収容人員1万6000人。ただし、ステージの中身次第では、ライブ開催時のキャパシティは1万人を下回ることもある。しかも、1983年の開業から40年が経過していて、老朽化も進んでいる。 万博記念公園で計画中のアリーナは関西最大級のキャパシティとなる見込みだが、機材とステージが設営されれば、収容人員は1万人程度にとどまるとみられる。 一方、首都圏ではここ数年で大型アリーナ施設が続々と開業している。横浜市では、2万人規模のKアリーナと1万人規模のぴあアリーナMMが、みなとみらい地区に開業した。来年には東京・お台場にトヨタアリーナ東京、今春には千葉県船橋市のららぽーとTOKYO BAY近くにLaLa arena TOKYO-BAYが、どちらも1万人規模のアリーナとして開業する。川崎市でも2028年開業を目指して、川崎駅近くに1万5000人規模のアリーナ建設の計画が動いている。 いずれも、収容人員は、機材などを一切配置せずに客席を詰め込んだ数字で、実際のライブ開催時の動員数は少なくなる。とはいえ、従来のさいたまスーパーアリーナや横浜アリーナ、東京五輪に合わせて開業した有明アリーナ、東京ガーデンシアターなどもあり、首都圏の1万人弱~2万人規模の会場は、関西と比べると圧倒的に多いのが現状だ。