光合成の過程、一端解明 「人工」技術開発に期待
光合成反応で水が分解されて酸素が放出される過程の一端を明らかにしたと、岡山大の沈建仁教授(生化学)らのチームが31日、英科学誌ネイチャーに発表した。光合成の仕組みが解明され、太陽光と水から水素ガスなど有用な化合物を生み出す「人工光合成」の技術開発につながることが期待される。 光合成は、いくつものタンパク質がくっついた複合体「PS2」が光を吸収し、水分子から水素イオンと電子を取り出して酸素を作り出す反応から始まる。チームは物質の極めて速い動きや変化を観測できるエックス線自由電子レーザーを使い、複合体が光を吸収した20ナノ秒後(ナノは10億分の1)から5ミリ秒後までの動きを捉えることに成功。複合体の中でタンパク質や水分子、色素が「オーケストラのように協奏的に」(研究チーム)働き、水分子が移動したり水素イオンが排出されたりする様子を観測した。 沈教授は「人工光合成実現というゴールまでには10年、20年かかる。今後は酸素ができる最後のステップの解析をしていきたい」と話している。