廃線危機のローカル線が超満員…近江鉄道“全線無料”で3.8万人「こんな人出見たことない」嬉しい誤算、感じた需要
(土井勉:一般社団法人グローカル交流推進機構 理事長) >>>近江鉄道線「血風録」シリーズの過去記事はこちら 【無料デイ当日の写真】まるで東京の地下鉄?赤字ローカル線の車内が超満員に >>>近江鉄道・ローカル線のギャラリーページへ(20枚) ■ 人々が集う近江鉄道線の駅 1.沿線住民が支える近江鉄道線 当たり前のことであるが、鉄道と駅は切り離すことができない関係にある。そして、これも当たり前のことであるが、駅は人々が集散する場であり、人々の様々な活動の結節点になることが少なくない。駅を単なる通過点とだけ考えると大きな可能性を見落とす恐れがある。 近江鉄道線においても、鉄道の利用だけでなく、複数の駅で駅舎を活用した地域活動などが行われている。例えば日野駅では、地域で活動する団体により古い木造駅舎がリニューアルされ、「観光案内交流施設なないろ」という名の場が設けられた。楽しくくつろげるコミュニティスペースが、地域団体によって運営されている(写真₋1)。 また、近江鉄道株式会社においても、2019年度から近江鉄道と地域の人たちが協働して「近江鉄道みらいファクトリー」という活動が展開されている(図-1)。ここでは、各駅舎の清掃・美化や鉄道沿線を巡るツアーの開催など、近江鉄道線のファンづくりのための様々な活動が継続的に行われている。
■ きっかけは交流会 2.沿線諸団体との交流と全線無料デイの実現 先に述べたように、実は沿線には様々な活動に取り組んでいる団体は少なくない。ただ、こうした団体間の情報がこれまでは特に共有されることがなかった。 そこで沿線の様々な団体が一堂に会するような交流会をやってみよう、という機運がでてきた。これも近江鉄道株式会社と滋賀県や沿線の自治体などが、近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会(法定協議会)を通じて、率直な意見交換を行い、信頼関係の構築ができてきたからだ。 2022年1月15日、各団体が自分たちの活動内容の発信や、団体同士の連携、新たな活動を創出する場づくりを目的として「近江鉄道線活性化に取り組む皆さんの交流会」が開かれた。 近江鉄道、県、沿線自治体が、それぞれのネットワークを活用して沿線諸団体に声をかけ、当日は各活動団体の代表者ら43人が参加した。 それぞれの活動紹介により、実は類似の活動をしている団体が少し離れたエリアに存在すること、あるいは一緒に活動をすると相乗効果が生まれそうな活動があることなど新鮮な発見があった。 そして、移動手段として近江鉄道線を活用しつつ、沿線諸団体が各駅で同じ日にイベントができないかという意見が出された1) 。 こうした意見を受け、近江鉄道株式会社でもイベントの開催が議論されることになった。