吉村太陽主将のリーダーシップで、 一戦一戦成長してきた開志学園JSC
第102回全国高校サッカー選手権新潟予選の準々決勝で、昨年の覇者・日本文理に勝利した開志学園JSC。サッカーを学ぶために県内外から集まった選手たちは、2014年以来2回目の全国大会出場に挑んでいる。 【フォトギャラリー】日本文理 vs 開志学園JSC 「開志学園JAPANサッカーカレッジ高等部」は、文字通りサッカーを専門に学ぶための学校。生徒のほとんどは寮生活を送りながら隣接した2面ピッチで午前・午後の2部練習し、スポーツ栄養学やサッカー理論などに受講しながら3年間を過ごす。 サッカーにどっぷり浸かれる好環境に魅入られて生徒がやって来る。チームは、2014年の第95回全国高校サッカー選手権に初めて出場。インターハイにも3回出場している。卒業生の多くは大学に進学しサッカーを続ける。2年前のインターハイ出場時のキャプテン東界杜は現在、関東大学サッカーリーグ1部の桐蔭横浜大学でプレー中。さらに、2018年に卒業した金浦真樹は関東大学1部の立正大学(現2部)を経て昨年、藤枝MYFCに加入。開志学園JSCでプレーした選手で、初のJクラブのプロ契約選手が誕生している。 大学サッカー、プロ…さらなるステップアップを狙う者たち。それだけにここには一家言を持った個性的な選手が集まり、毎年、個を磨きながら集団(チーム)にすることに腐心している。1人のキャプテンに2人の副キャプテンと、リーダー3人体制にして寮での私生活から和を成すようにしているのも、そんな理由から。 サッカーの個人能力も多岐に渡る。毎年、その年に入学した生徒のタイプ・スキルによってチームスタイルが定まっていく。そのため3年生がトップチームのほとんどを占める。 今年の3年生は、2年前にインターハイに出た時のメンバーと比較して「近いレベルにある」と宮本文博監督。一方で、個性も強く、悪く言えば独りよがり。セルフコントロールができず練習に身が入らないこともしばしば。昨年の新チームスタート時は不安ばかりが先行したという。 そんな個性派集団を我慢強くまとめてきたのが、キャプテンの吉村太陽(3年)だ。「やんちゃな選手ばかりで大変でしょう」と声を掛けると、「そうですね」と笑顔が返ってきた。 「でも、我が強い分、個性的なプレーができるというメリットもあるので、それを最大限生かしつつ、最低限のチームプレーをやらせるということを心掛けてやってきました。うちは個性がはまったときは本当に爆発的な力を発揮します。その歯車をうまく噛み合わせていくために、自分が声掛けだったり、空いた穴に入ったりしてきました」 選手権予選準々決勝の日本文理戦、チームの2得点のいずれも、ゴール直後にピッチ上を乱舞するチームメートの中で1人だけ冷静にベンチに歩み寄り指示を仰ぐ姿が印象的だった。DFリーダーとして左サイドバックから守備をまとめるだけでなく、チーム全体も統率する吉村。入学して同級生を見渡した時、チームのまとめ役は自分がやるしかないと思ったと言う。その決意は、3年間の目標とする「優勝のためのステップの1つに過ぎなかった」と事も無げに語る吉村。 「私が見てきた歴代のキャプテンの中で1、2位の人物」と宮本監督が賛辞するのも頷ける。 吉村はこの学校のサッカーができる環境に憧れて福島県から入学した。卒業後は大学でプレーを続け、いずれ指導者の道に進みたいと話す。吉村が左サイドで能力を支え続け、日本文理戦で決勝点のアシストを決めた左MFの浅野夏輝(3年)、先制点のFW阿部日夏太(2年)などはプロ選手になることが目標。他にもプロ志向のメンバーがいる。それぞれ目指す道は異なるが、共通のプロセスとしてあるのが全国大会出場。それに向けて、強烈な個性は、1つの個性派集団になりつつある。 「ベスト4まで来ましたが、相手がどうこうというより、うちのやることは変わりません。やんちゃなチームが、この大会を通して成長していくことが大事。今日勝って1つ成長できたかも。さなぎだったのが、1つ化けたかな」(宮本監督) 準決勝は11月3日。今季、戦った県リーグ1部では1度も勝っていない(0-1、2-2)上越が相手だが、成長の階段を上る準備はできている。 (文・写真=いのうえ・しんじゅ)