全てのローグライクの原点を今だからこそ(細かい違いも含めて)遊んでみよう!『Rogue』【げむすぱローグライク/ローグライト部】
自動生成やパーマデス(1度死ぬとすべてを失う)など、さまざまな要素が絡み合い、何度遊んでも楽しむことのできるゲームジャンル「ローグライク/ローグライト」。このジャンルの詳細な解説は以下の過去記事に譲るとしまして、今週から珠玉のローグライク/ローグライトゲームを1本ずつ紹介していく「げむすぱローグライク/ローグライト部」がスタートします!記念すべき第1回はこのジャンルの名称の大本となった『Rogue』をご紹介します。 【画像全15枚】 全てのローグライク/ローグライトの祖となった『Rogue』とはいったい何か 『Rogue』は1980年に、カリフォルニア大学バークレー校の学生が『Advanced Dungeons and Dragons 1st Edition』(以下、『AD&D』)の戦闘計算式・モンスターデータ・迷路の自動生成ルーチンなどを参考に作り上げたのが『Rogue』です。プレイヤーは地元の戦士ギルドの卒業試験として、「運命の洞窟」の地下26階にある「イェンダーの魔除け」を取り戻すことが目的です。この卒業試験がいかに難しいか、あなたは数多の死をもって知ることになるでしょう……(逆に言うとこの町の戦士ギルド、この試験を突破した猛者だらけということに……恐ろしい)。 それはともかく、(現代から見ればただの文字列の羅列にしか見えないかもしれないが)ダンジョンの探索状況が1画面ではっきりとわかるユーザーインターフェースと、手ごわい敵とランダム生成の迷宮、未識別のアイテムが多数登場し、何度遊んでも違った冒険体験ができるこのゲームはプレイヤーの間で評判を呼びました。ほとんどのアイテムが未識別で登場するのは「自分たちが何度遊んでも楽しめるようにするため」ということで、ゲームの開発当初から繰り返し遊ぶことを想定して作られていたことが伺えます。 後に『Rogue』はバージョンアップを繰り返しながらUNIXの標準添付ゲームソフトとなり、世界中の学生や研究者の間に広がることになりました。ここから『Rogue』にのめり込んだ学生・研究者を多く産み出し、幾種もの本作を模した「ローグライク」ゲームを輩出することになるのですが、それはまた別のお話。 また、『Rogue』は商業展開が行われ、1985年にはEpyxからIBM-PC環境向けに移植されたものが発売されています。日本でも1985年に開始されたパソコン通信「アスキーネット」のサービスの一環でオンライン経由で『Rogue』がプレイできた時期があり、1986年にアスキーから同ゲームのオフライン版も販売されました(前述のEpyx版とは異なる)。 そんな昔のゲームが今遊べるの?と思ったそこのあなた!遊べるんです!Steamで! Steamで購入できるのは、前述の1985年にEpyxが発売したIBM-PC版です。マップやプレイヤー、落ちているアイテムは通常の文字ではなく絵文字表示になり、カラー表示も採用されてわかりやすくなっています。このゲームのキャラクターの移動は「hjklキーで左下上右、yキーで左上、uキーで右上、bキーで左下、nキーで右下」と一見直感的ではないキー操作ですが、慣れるとこのキー操作で自在にキャラクターを動かすことができるようになります。 このキー操作は『NetHack』や『Angband』といった古典的ローグライクでも採用されているので、慣れておくと他のローグライクも充分に遊べるようになります。なお余談ですが、このキー操作はUNIX系統のOSにはほぼ確実に搭載されている「vi」や「vim」といったテキストエディターのカーソル操作と同一であり、覚えておくとサーバーマシンの設定ファイル書き換え作業などを行う際に役立つかもしれませんよ(少なくとも筆者は過去にシステムエンジニアとして働いていた頃に役立った)。 Steamで配信されているIBM-PC版の特徴は「IBM-PC版である」ということです。どこの政治家構文だオメー、と思う前に聞いてほしいのですが、『Rogue』はバージョンによって大きく仕様や難易度が異なります。その中でもIBM-PC版は現行最新の『Rogue』より少し古いバージョンであり、最新の『Rogue』とは違ったゲームバランスが楽しめるのです。 過去のバージョン独自要素の例を挙げると、「攻撃を受けると分裂するSlimeが登場する」こと。『Rogue』のバージョン5.3以降では「S」シンボルは分裂しない「Snake」に置き換えられているため、分裂するモンスターは登場しません。しかしながら実質的に『Rogue』のコンソール機向け移植と言われる1993年発売の『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』では攻撃を受けると分裂する特性を持った「スモールグール」が登場するため、『トルネコの大冒険』の開発陣がこうした古いバージョンの『Rogue』にも精通していたのは間違いのないところでしょう。 他にもIBM-PC版の独自要素(元の『Rogue』とも異なる)として、「Ice Monsterが普通にダンジョンを徘徊している」点が挙げられます。「Ice Monster」はこちらから攻撃を仕掛けるまで絶対に動かないが、攻撃を与えて起こすとプレイヤーに冷凍光線を放ってプレイヤーの動きを封じ、こちらのレベルが低いとそのまま凍死してしまう……という本来の『Rogue』ならば恐ろしい敵です(『トルネコの大冒険』の「まどうし」の元ネタですね)。が、IBM-PC版ではそんな敵が何故か平気でダンジョンを徘徊しています。 しかし冷凍光線で動きを封じられる可能性こそあるものの、凍死が低レベルでもめったに起こらず(もしかしたら絶対に起こらないのかも)、こちらの攻撃で簡単に倒せる割に経験値が膨大という、一種の稼ぎモンスターと化しています。但し他のモンスターと一緒に出てくると冷凍光線で動きを封じられている間に他のモンスターに殴り殺される可能性があるので、要注意モンスターであることに間違いはないでしょう。 そんな感じで進めていた冒険ですが、地下13階でTroll2体に囲まれて為す術なく死んでしまいました。Trollあたりの敵から相手をするのにアイテムのサポートが必要になってくるので、いかにそこまでに有効なサポートアイテムを引けているか、レベルや装備は充分かが重要になってきます。何はともあれ、SteamのIBM-PC版は前述のIce Monsterの仕様などを考えると、本家『Rogue』の入門としてアリな内容かと思います。 本家『Rogue』もフリーウェアとしてダウンロードできる 「IBM-PC版は『Rogue』の古いバージョン」と先述しましたが、それでは『Rogue』の最新バージョンを遊ぶ方法はあるのでしょうか。答えは「Yes」です。Y.Oz Vox氏の個人サイトでは古今東西の再配布可能なローグライクゲームがWindows向けの実行可能ファイルとして公開されており、その中で「Rogue 5.4.5」が最新版にあたります。 但し、「最新版が常に一番面白い」と思ったのなら、それは大きなミステイクです。というのも、『Rogue』のバージョン5.4には「Scroll of Identify(識別の巻物)」がアイテムの種別ごとに細かく分かれているという仕様が採用されているからです。このせいでバージョン5.4では巻物の種類が無駄に増え、識別の手間も余計にかかる……と、なぜこんな仕様を採用したのか理解に苦しみますが、ともかく最新の『Rogue』ではこういう仕様が採用されているということは覚えておいてください。 さすがにこの「複数種類のScroll of Identifyがある」という仕様は評判が悪いのか、Y.Oz VOX氏の配布しているサイトには氏が独自に拡張した「Rogue 5.4.5x」というバージョンも配布されています。このバージョンは起動時に「Scroll of Identifyは複数か1種のみか」「画面をカラー表示するか」「暗い部屋(自分の周辺しか視界が見えない部屋)を生成するかどうか」「モンスターにSlimeを登場させるかどうか」がオプション指定できるようになっています。個人的におススメのオプションは「rogue -32」または「rogue -30」です(Scroll of Identify1種のみ、カラー表示(2種類))。 これは上記の「-32」オプションを採用してプレイしている画面。なかなかアイテムの引きがよく17階まで辿りつけています(Xerocが化けたアイテムを拾おうとして襲われた場面。『トルネコ』のミミックですね)。 しかしその直後、Xeroc→Trollと連戦して消耗していたところにPhantom(透明で見えない、『トルネコ』のシャドー)に不意を突かれ「え?」という感じで死亡!さすが、一切の容赦がないのが『Rogue』なのです。 『Rogue Clone』ってどうなの? ここまでに紹介してきた『Rogue』とは別に、日本では「ローグ」として親しまれてきたタイトルがあります。それが『Rogue Clone II』です。2024年10月現在も、同ソフトの日本語版がへぽぽ氏のホームページからダウンロードできます。 『Rogue Clone』は『Rogue』のソースコードが非公開だった時期があり(現在はソースコード公開)、その環境で『Rogue』をなんとか遊べないか……と考えた製作者が、目コピで『Rogue』そっくりなゲームを開発し、そのソースコードを公開したことが始まりになります。そのソースコードが公開された『Rogue Clone』をもとに世界中のローグファンが新たなローグライクゲームを作りました。当時リコーに勤めていた太田純氏がMS-DOSで『Rogue Clone II』の日本語版を作成し、それをへぽぽ氏がWindowsに移植したのが本作です。 本作の利点は何と言っても「日本語に対応している」ことでしょう。操作系統こそ『Rogue』と同じでとっつき辛いですが、日本語でアイテムの効果が理解しやすいのは大きな利点です。 「鎧を保護する巻物」(『トルネコ』でいう「メッキの巻物」)といった、有用アイテムが比較的出やすいのも『Rogue Clone II』の特徴といえます。また、『Rogue Clone II』では自分の周囲にしか視界がない「暗い部屋」が登場しません。全体的にプレイヤー有利な調整になっています。 しかし、『Rogue』と『Rogue Clone』で明らかに実装が違うのが敵モンスターのパラメーターや命中・ダメージ判定の計算式です。『Rogue』の命中・ダメージ計算が完全に『AD&D』に準拠しているのに対し、『Rogue Clone』はモンスター個別に命中率のみが設定されて回避率が設定されておらず、こちらの攻撃の命中率やダメージ計算にレベルが大きく関与、防御力は敵の攻撃のダメージの割合減算に用いる……と、『AD&D』とは全く無関係の独自の計算式となっています。 これらの違いには、『AD&D』のライセンスに関わるかもしれない部分を極力避けたいという製作者の思惑が現れているのかもしれません。ちなみに『トルネコの大冒険』はこちらの攻撃の命中率は常に固定でレベルアップで攻撃力が増加し、敵の攻撃力・防御力・命中率も固定、自分の防御力は敵からのダメージの割合減算に使う……と、かなり『Rogue Clone』寄りの戦闘計算式で実装されています。 とは言え、『Rogue Clone』も難易度が高いゲームであることは確かです。序盤で武器を大きく強化出来たり、早い段階でレベルを上げていけたりすると『Rogue』よりは楽に進めますが、複数の敵とまとめて戦おうとする、もしくは終盤の敵とガチでやり合おうとするとあっさりと死ぬのは『Rogue』同様です。『Rogue』自体もバージョンで手ごたえが異なることを考えると、『Rogue Clone』も『Rogue』のバリエーションの一つとみても良いのではないでしょうか。 さて「Game*Sparkローグライク/ローグライト部」第1回『Rogue』、いかがだったでしょうか。元祖の『Rogue』に触れてみたことがないけれど……という方が「触れてみたい!」、あるいは歴戦のローグライク愛好家が「たまには運命の洞窟に潜ってみるかな」と思って頂ければ幸いです。
Game*Spark ずんこ。
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