高齢の親「お風呂で寝ちゃって...」は命の危険 入浴中の事故招く「ヒートショック」家族を救う6か条
家や居住施設の浴槽でおぼれて死亡する65歳以上の高齢者数は年々増えており、厚生労働省の「人口動態統計」によると、2022年には全国で5824人が亡くなった。これは、同じ年に交通事故で死亡した高齢者2154人の2.7倍にあたる。家族や知り合いに「風呂で亡くなった人いる」が少なくないのは、統計からも窺える。 浴槽でおぼれて亡くなる高齢者は交通事故死の2.7倍 東京消防庁によると、「おぼれる」事故による高齢者の救急搬送人数は特に冬場に多くなる。増加傾向は11月に始まって真冬にピークとなり、翌春までつづく。 ■温度の急変で血圧が変動、貧血に 暖かい部屋から寒い部屋への移動など、急な温度変化が体に影響を与える。血圧が大きく変動し、一時的に脳に血液が回らない貧血状態になり、失神することもある。「ヒートショック」と呼ばれている。入浴中にうとうとしても、普通なら顔が水につかったときに目が覚めるが、ヒートショックで失神すると目覚めないまま窒息する恐れがある。 日本気象協会は「ヒートショック予報」を出している。気象予測をもとに、家の中でのヒートショックのリスクの目安をイラストで示している。
お湯につかるのは10分まで
では、入浴中におぼれる事故を防ぐためには、どうすればよいのだろう。 政府広報オンラインの記事は六つの対策を呼びかけている。 1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく2)湯温は41度以下、お湯につかる時間は10分までを目安にする 3)浴槽から急に立ち上がらない4)食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避ける 5)お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける6)家族は入浴中の高齢者の動向に注意する このうち1)について、浴室に暖房がない場合、「浴槽に湯を入れるときにシャワーから給湯する」「浴槽の湯が沸いたところで、十分にかきまぜて蒸気を立て、ふたを外しておく」といった工夫もある。 2)については、温度計やタイマーを用意し、湯温や入浴時間などを「見える化」するようすすめられている。 3)入浴中は体に水圧がかかっている。急に立ち上がると、その水圧がなくなり血管が一気に広がる。その結果、脳に行く血液が減り、貧血のような状態になり意識を失ってしまうことがある。手すりや浴槽のへりなどを使って、ゆっくり立ち上がるとよい。 4)は、食事や飲酒によって一時的に血圧が下がるため。また、体調の悪いときのほか、精神安定剤、睡眠薬などの服用後も入浴を控える。 5)と6)は、もし異変があったときに早く発見するためだ。 寒い冬のお風呂は心地よい。しかし、うとうとすると、おぼれる危険性がある。俳優・歌手の中山美穂さん(54)は入浴中の不慮の事故で亡くなった。特に高齢者の事故は年々高い水準が続いており、家族とともに対策を確認し、よく注意していきたい。 (ジャーナリスト 橋本聡)