エムドゥ・モクター、『Funeral For Justice』の姉妹アルバムを発表&新曲先行公開も
ニジェール共和国のサイケ・ヒーローにして、2019年のアルバム『Afrique Victime』が世界的にブレイクしたエムドゥ・モクター(Mdou Moctar)が、2025年2月28日(金)に最新アルバム『Tears of Injustice』を「マタドール」よりリリースすることを発表。あわせて、新曲「Imajighen (Injustice Version)」を先行で公開しています。 本作は、今年5月発表された『Funeral For Justice』をアコースティック楽器と伝統楽器向けに全て再レコーディング・再アレンジした“進化版”。エネルギッシュなオリジナルに対する、内省的な対照版とも言える内容となっています。 2023年7月、エムドゥ・モクターがアメリカをツアーしている最中、ニジェールのモハメド・バズーム大統領が軍事政権によって退陣させられ、大統領官邸で囚われの身となりました。軍政は国境封鎖を命じ、バンドメンバーのエムドゥ・モクター、アフムードゥ・マダサネ、スレイマン・イブラヒムは家族のもとに帰ることが不可能に。『Funeral for Justice』の姉妹アルバムをレコーディングする計画はすでに進行中でしたが、そのアイデアは、新たな意味を持ち始めます。 ツアーがニューヨークで終了した2日後、4人組はエンジニアのセス・マンチェスターとともにブルックリンのBunker Studioで『Tears of Injustice』のレコーディングを開始。バンドのアメリカ在住のベーシスト兼プロデューサーのマイキー・コルタンは「僕らは、いつもライヴでアレンジを変えて遊んでいる。レコードでもそれができることを証明したかったんだ。それに、削ぎ落とされた編成で演奏することで、バンドの別の一面が現れる。何か新しいものになるんだ」と説明しています。 『Funeral for Justice』では、ニジェールの苦境に対する怒りや、トゥアレグ族の人々の怒りが、音楽のボリュームやスピードに端的に表現されていました。『Tears of Injustice』では、曲の重みは健在ですが、音が増幅されているわけではありません。その音は、悲しみに満ちており、貧困、植民地による搾取、そして政治的動乱の絶え間ない渦中にある国民の悲しみを伝えており、トゥアレグ族による、生々しく本質的なプロテスト・ミュージックに仕上げています。 レコーディングは、みんなで同じ部屋に入って行ない、セッションを、ゆるく、無駄をそぎ落とし、自発的なものに。「事前にアレンジを練ったりはしなかった」とコルタンは振り返り、「ただ演奏して、感触を確かめ、曲を作っていった」と語っています。 作業はすぐにまとまり、主要なレコーディングはわずか2日間で終了。『Imouhar』の催眠術のような8分のテイクは、実際には2つの異なるパートを連続して演奏したもの。モクターが、テイクを区切るために十分な時間を置かずに、演奏を続けてしまったのも一因とのこと。1ヵ月後、バンドはニジェールに帰国することができましたが、その際、コルタンはリズム・ギタリストのマダサネにズーム・レコーダーを持たせ、マダサネは、それを使ってトゥアレグ族のグループによるコール・アンド・レスポンス・ヴォーカルを録音し、後にそれを最終的なミックスに加えています。 Photo by Nelson Espinal