40年無職女性、元生保レディー、介護士 異例作家デビューでぶっちゃけ「『ネタになる』とメモを…」
「職場でバレることはありますか?」直球質問も
来場者からの質疑応答コーナーでは、こんなことも明らかに。忍足さんにとっては、壁が目の前にある密室空間で書くのを好まず、「窓辺」が執筆にぴったりだといい、「よく窓辺のドトールにいます(笑)」。著者3人の“意外な横顔”も見ることができた。 畑江さんは現役介護士の仕事に就いている。認知症になり101歳で亡くなった祖父を看取ったグループホームの職員たちが涙を流した光景を目の当たりにし、「自分も何かの役に立ちたい」と介護業界に飛び込んだ。 一方で、グループホーム勤務で待っていたのは、想像を絶する現実だった。勤務初日に入居者のおばあちゃんからうんちを手渡された。介助中に食事を顔に吹きかけられたり、たたかれたりすることもしばしば。「精神崩壊寸前」まで追い込まれたこともある。それでも、「介護職は『きつい』『汚い』『危険』に『給料が安い』の『4K』と言われていますが、高齢者との触れ合いは日々発見があって、案外楽しいんですよ」。入所者に寄り添うスタイルで、前向きに取り組んでいる。 トークイベントで中村氏から「職場でバレることはありますか?」と素朴な質問が。畑江さんは「まだバレないですね」と笑顔をまじえて答えた。本業の傍らの執筆活動。仕事は毎朝5時起きだが、仕事終わりの深夜2時、3時まで筆を執った。「半ば根性で乗り切ったところはあります。諦めないことが大事だと思います」と振り返り、「なるべくかっこつけないようにする。人に言えないことを書く。いいことをあまり言わないようにする。こういったことを心がけました」と、執筆における自己テーマについて明かした。 事務職から転職して介護士になって5年目。今後の文筆業との兼ね合いをどうするのかを聞かれると、「基本は両立したいです」と明言。このほど作ったという名刺には「作家 オタクの介護職」とあり、キャッチーな肩書は可能性を感じさせる。 個性あふれる3人の著者は、東京・浅草橋の古本屋「古書みつけ」で店番も担当。“会い行ける”作家でもある。忍足さんはトークイベントの場で、漫画原作の創作活動を進めていることを明かした。これからも文筆業やクリエーターの世界で活躍を見せてくれそう。多様な魅力が全開になりそうな3人の“次回作”が楽しみだ。
吉原知也