韓国とのテストマッチに日本代表の新戦力は見えたか?
世界では、背番号3をつける右プロップの大型化が進む。横にも縦にも大きな人が、生来の馬力を活かさんとしているのだ。今後、世界的に小柄な選手の多い日本ラグビー界でそのトレンドにキャッチアップするには、他競技からの転向者や外国出身選手のコンバートなども求められるだろう。トップリーグで3連覇中のパナソニックには、3人のトンガ人右プロップを在籍させている。 イングランド大会で畠山健介(身長178センチ、体重115キロ、現在はイングランドのファルコンズでプレー)、山下裕史(身長183センチ、体重120キロ、スーパーラグビーのチーフスに在籍)がプレーしたこの位置。サンウルブズの垣永真之介や具智元、浅原拓真など若き日本人経験者も意地を見せる隊列にあって、タックルやランでも力強かった知念は、時代の波に乗った新ヒーローとなるか。 中竹HC代行はこんなメッセージを贈った。 「彼はラグビー経験値が低いと言われていますが、僕からしたらそんなのは関係なく、ラグビープレーヤーとして立派にできると思っている」 フォワード陣が気を吐くなか、5トライを挙げた仕留め役がウイングの児玉健太郎だ。 パナソニックで2年目のシーズンだった昨季、人気者である山田章仁が故障離脱するや、その空いた位置に定着していた。小倉高、慶大と同じルートを先に歩く山田を「アグレッシブにやってきた結果、あの章仁さんがいる」と敬愛する一方、「自分はバランスを取りながら…ガツガツ行く」。タッチライン際で止めを刺したシーンより、相手キック捕球後の鋭いカウンターアタックに手応えを掴んだ。 イングランド組のウイングでは、山田と松島幸太朗がスーパーラグビーに挑戦中。藤田慶応和と福岡堅樹(いずれもパナソニック入り!)は夏のリオデジャネイロ五輪に向け7人制ラグビーに専念している。将来の代表入りが期待されるホセア・サウマキも、所属の大東大の都合から国際舞台へは来年以降の挑戦となろう。 「自分のやることは決まっている。代表組が留守の時、しっかり活躍する」。 常連組や注目株のいない間にチャンスを掴んだ児玉は、戦前から「ラッキーだな」と笑っていた。 「チームの戦術を理解して、ボールをもらわないプレーもガツガツやる。児玉、渋いなと言われるように」 この日の韓国代表はややタックルがソフトな印象で、ジョン・ウォルターズ新監督曰く、「最初からミスが多すぎた。リズムに乗れなかった」。日本代表は、体勢が高いままコンタクトしてもひっくり返されず。プレッシャー下でのパフォーマンスは、なかなか見定められなかった。もっとも、かような背景を差し引けば、未来への光源はあった。山本も安藤もタタフも知念も森も児玉も、相手に左右されなかった。 ここからまず求められるのは、今度の「中竹ジャパン」と「ハメットジャパン」との、ひいては「ジェイミージャパン」との連関性か。翌週の5月3日、中竹らはサンウルブズとの合同練習を予定している。その場で選手の印象やチームコンセプトなどを共有するようだが、誰が次なるチャンスをつかむのか。 6月中旬以降、サンウルブスのマーク・ハメットHC代行が指揮を執る日本代表は、カナダ代表とのアウェーゲームを経て、イングランド大会で唯一敗れたスコットランド代表との国内2連戦に挑む。この試合には、海外挑戦組を含めたベストメンバーが召集される予定だ。 (文責・向風見也/ラグビーライター)