韓国とのテストマッチに日本代表の新戦力は見えたか?
ラグビーの日本代表は30日、神奈川のニッパツ三ッ沢球技場で昨秋のW杯イングランド大会以降初のテストマッチに挑んだ。韓国代表とのアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)初戦を85―0と圧倒した。 ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)は、現在、スーパーラグビーでハイランダーズのHCを務めているため、今回のチームは、中竹竜二HC代行が率いた。歴史的な3勝を挙げたW杯イングランド組は1人もいない。五郎丸歩らスーパーラグビーでプレーする選手は招集できず、専門誌読者が選んだ大会MVPのトンプソン・ルークは代表引退を表明と、個別の事情が重なった。 何より日本協会が、6月初旬までおこなわれるARCをテストマッチでありセレクションマッチと捉えていた。2019年のW杯日本大会に向け、テストマッチをプレーできる選手の層を少しでも広げたいのだ。その意味では、「中竹ジャパン」から5月下旬発表の「ハメットジャパン」に誰が食い込めるのかにも注目が集まった。約1週間の準備期間で本番を迎えた中竹HC代行も選手に「本物のジャパンになろう」と言っていた。 ハメットHCらサンウルブズのスタッフが見守るなか、出色の働きを示したのはバックローだろう。接点でのぶつかり合いに顔を出す、フォワードの第3列のことだ。 まず、フランカーの山本浩輝が防御で光った。相手のサポートが遅れたと見るや、長い手足を活かして果敢に球へ絡みついた。身長187センチ、体重95キロの23歳。島根の石見智翠館高時代からその才気が買われていた。東福岡高で日本一となった布巻峻介、水上彰太ら同い年の好フランカーを抑えての初代表である。 エディー・ジョーンズ日本代表前HCは、常々、「バックローは体重100キロ以上なければ」と言っていた。山本の所属する東芝は肉体強化を部是とするだけに本人の意識次第で世界的な名黒子役への道は開ける。 ジャッカルと呼ばれるこのプレーは、もう1人のフランカーの安藤泰洋も繰り出した。身長181センチ、体重96キロの28歳。東芝の冨岡鉄平HCによれば、「身体は小さいけど足腰の粘りはピカイチ」である。 関東学院大の1年時、部員の大麻使用でチームの出場停止を経験。若くして稀有なキャリアを積んできている。代表選手としてフル出場すると、こんな言葉を残すのだった。 「韓国代表の(接点への)寄りは遅かった。ただ、相手が速くても遅くても、そういうところ(ジャッカル)は狙うのが当たり前。意識していました。特にこういう大差のつくゲームでは、小さいところ(が大事)」 大勢が決していた後半12分、その「小さいところ」でも良さを覗かせる。敵陣ゴール前右で衝突を重ねるなか、山本が突進する。その隣から邪魔に入ろうとする韓国代表の防御へ、安藤が真正面からぶち当たった。