ベンチャーが「カイワリ×マアジ」ハイブリッド魚の養殖開始 南房総の富浦漁港(千葉県)
館山湾で取れたカイワリとマアジを掛け合わせてできる「ハイブリッド魚」の養殖が、南房総市の富浦漁港で始まった。東京海洋大の研究者と、大手企業の出身者でつくるベンチャー企業「さかなドリーム」(館山市)が手掛け、岩井富浦漁業協同組合が協力。安房発のブランド養殖魚として、来年春から夏にかけての販売を目指す。
さかなドリームは、かねて食の分野での起業を考えていた細谷俊一郎さん(32)、石崎勇歩さん(33)と、魚類の品種改良に詳しく、新たな魚種の開発と食べ物としての普及を図る同大の吉崎悟朗教授(58)、森田哲朗准教授(47)の4人が昨年7月に起業した。 海洋大の研究施設がある館山市に拠点を置き、世界最先端の品種改良技術を使って上質な味の魚種を開発。消費者の視点でブランドとしての価値を高め、安定的な供給を目指す。 養殖の第1弾として着手したのが、脂乗りも味もいいものの、市場にはあまり出回らないカイワリと、食卓でおなじみの味のマアジを掛け合わせた今回のハイブリッド魚だ。 海洋大のオリジナル品種で、生産には、代理出産のような技術を用いる。味は、試食した漁師やすし職人、卸業者からの評価が非常に高く、▽成長の速度がマアジの1・5倍▽旬を問わずにいつでもおいしい魚が生産できる▽品種が海外などに流出するリスクがない――などのメリットが特徴だ。 「カイワリ×マアジ」の養殖を本格的に始めるのに当たり、県館山水産事務所に相談した上で、希望に合う養殖ができる岩井富浦漁協に協力を依頼した。 漁協は、過去に幾度となく台風の影響で網が流されたり、壊れたりするなどの経験から養殖を取りやめていた。このため当初は難色を示したが、役員らで話し合いを重ね、「明るいニュースとして地域のにぎわいにつながるのであれば」と、台風の被害を最小に抑えられる範囲で養殖の管理を引き受けた。この漁協では約35年ぶりの養殖再開となる。 7日に関係者らによる勉強会と、養殖場の見学会が漁協で開かれ、地域を活性化する素材として期待できることなどのビジョンが説明された。