「マイナ保険証」一本化への対応に苦慮…「廃業」選ぶ医療機関も 浸透へ課題改善求める声(島根)
山陰中央テレビ
これまでの健康保険証は12月2日から新規発行が終了し、マイナンバーカードと保険証が一体となった「マイナ保険証」に一本化されます。本格運用まで一週間を切る中、医療現場では読み取り機の不具合などでのトラブルがあるといいます。その実態を取材しました。 田中祐一朗記者: 「マイナ保険証」とは、健康保険証を登録したマイナンバーカードのことです。登録の方法は3つあります。1つ目が医療機関で申請する方法。病院や薬局にマイナンバーカードを持っていき、カードリーダーで読み込むことで登録できます。2つ目がアプリで申請する方法。マイナポータルで登録をして申請することができます。3つ目がコンビニの銀行ATMで申請する方法。セブン銀行のATMで申請できます。 マイナ保険証は、医療機関や薬局での受付け時にカードリーダーにかざして使用します。医療を受ける側は、医療費控除の確定申告が簡単なこと、高額療養費の限度額を超える支払いが免除されること、過去に処方された薬や通院歴などの情報を医師、薬剤師にスムーズに共有できるなどのメリットがあります。また医療機関側も患者の情報をもとに適切な医療を行うことができたり、事務職員の負担軽減につながるといったメリットがあります。その一方で、カードリーダーの導入など準備が必要な医療現場はさまざまな課題に直面しています。 松江市内の歯科医院では、最新のカードリーダーを導入。この医院では不具合はまだ起こっていないといいますが、全国的に発生している機械のトラブルや、利用者が暗証番号を忘れるなどの事例を聞き、不安は尽きないといいます。 浜田歯科・浜田陽一郎歯科医: 医院側にとりましても、受付の段階でトラブルになるというのが最大に困ったことなんです。医療機関は本来医療を行うところでございますので、患者さんとドクターとの間に橋渡しができればそれで結構なわけです。 さらに深刻なのが…。 浜田歯科・浜田陽一郎歯科医: 老齢の先生方にとりましては、ちょっとこのシステムについて行けないということで、全国的にはもうこの際、閉院をしてしまおうという先生がやっぱり結構いらっしゃいましてですね。 県内の医科・歯科の開業医の7割が加入する島根県保険医協会の副会長を務める浜田歯科医によると、システムの導入が困難な高齢の医師が営む医療機関では、これを機に廃業を選択するところもあるといいます。混乱の種が尽きない中で、島根県保険医協会が呼びかけているのが、マイナ保険証と従来の保険証の両方を持参すること。カードリーダーのシステムエラーなどへの対応策です。 浜田歯科・浜田陽一郎歯科医: 保険者の番号とか、そういった保健保険を診療を行うための基本情報が知りたいのです。そのために、基本情報さえしっかりと私どもの方に伝えていただけましたら、スムーズに診療に入れる。 従来の保険証は最長1年間有効です。医療を受ける側もトラブルを避ける工夫が必要です。 田中祐一朗記者: 厚生労働省によると、10月時点のマイナ保険証の使用率は、島根県が全国2位の21.7%、鳥取県が18.8%と両県とも全国平均を上回っていますが、それでも2割前後です。国は補助金などを活用し、普及を進めるとしていますが、浸透のためにはメリットを丁寧に説明し、課題については都度改善していく必要がありそうです。
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