ロシア・中国など主要新興国によるBRICSにASEAN諸国が加盟、どこまで深刻に考えるべきか?
ロシアや中国など主要新興国によるBRICSに、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国の加盟申請が相次いでいる。こうした動きはグローバルな政治経済の中でどのような意味があるのだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員) 【著者作成グラフ】ASEAN3カ国の貿易総額の国別内訳。各国ともロシアとの貿易関係は希薄だ 2024年10月22日から24日にかけてロシアのカザンで開催されたBRICS首脳会議で、インドネシアのスギオノ外相が、インドネシアがBRICSに加盟する意向であることを表明したことが話題となっている。ジョコ・ウィドド前政権はBRICSへの加盟に対して距離を置いていたが、プラボウォ・スビアント新政権で路線が転換したわけだ。 もっとも、スビアント新大統領が就任したのは10月20日であるし、新大統領は前政権を国防大臣の立場で支えていた。政権交代に伴う急激な路線転換というよりも、前政権から徐々にその意向を強めていたのかもしれない。その後、インドネシア外務省のロイ・ソエミラット報道官は10月31日、BRICSに正式に加盟を申請したと発表した。 タイとマレーシアに続き、インドネシアが加盟を申請したことで、ASEAN(東南アジア諸国連合)からBRICSに加盟を申請した国は3カ国となった。ASEANのキープレーヤーであるこの3カ国がBRICSに加盟を申請したことで、先進国、特に米国離れであるとか、ドル離れが進むといった見方があるが、それは行き過ぎた評価だ。 ここでBRICSに加盟を申請したASEAN3カ国の貿易構造を確認すると、各国ともに貿易総額の4割以上が先進国、つまり米欧日に代表されるG7グループであることが分かる(図表1)。続いてシェアが高いのが中国であり、インドネシアは2割強、他の2カ国は2割弱である。 【図表1 ASEAN3カ国の貿易総額の国別内訳(2021-23年平均)】 ここで注目されるのが、中国以外のBRICSとの貿易の割合が少ないことだ。 特に、各国ともロシアとの貿易関係は希薄であり、対ロ貿易の額は貿易総額の1%程度である。ロシアがホスト国となり、BRICSをまとめているのはロシアであるような印象を前面に出した今回のBRICS首脳会議だったが、BRICSに加盟を申請したASEAN3カ国にとって、経済的に密接なパートナーはロシアではなくて中国なのは明らかだ。