脚本の技が光る…20年以上変わらない魅力とは?『相棒 season23』考察レビュー。加藤清史郎“創”に抱く期待と心配
20年以上変わらない魅力
また事件でも“変化”がキーワードであった。 まずは第一の事件、仁科征司(内野謙太)が起こした芦屋議員殺人事件。二科は自身の臆病さのせいで、親友であり同僚でもあり恩人でもある日高行人(中村歌昇)の人生を狂わせてしまった。 日高は二科に自分の意志を継いだ勇気ある警察官になって欲しいと望んでいたが、二科は警察官としての誇りよりも日高への情が勝り、全ての根源である神山の死刑執行の為なら何でもやるようになってしまった。 これは日高の思いを踏みにじる、警察官としても許されない行為だが、臆病だった二科の“変化”と捉えることもできる。 そんな警察官であることを放棄した二科に対する、熱い正義感を持っている右京の激昂が素晴らしい。警察官とはどんな人間で、拳銃は何の為のものか、何よりも日高の想いを無碍に扱っていることを伝えるのが熱い。 やはり『相棒』は、“悪”に対し研ぎ澄まされた“正義”を杉下右京がぶつけていくのが20年以上変わらない魅力である。それを今期は初回から再確認できた。
利根川幹事長というキャラを使った批判
次に第二の事件、利根川幹事長(でんでん)が画策した藤原総理爆破事件。こちらは利根川幹事長が政権の“変化”を止める為に、ヤクザと闇バイトを駆使して内閣の支持率を数%上げてから解散総選挙に臨むという政治的な事件であった。 証拠はないものの、真実を導き出した特命係を権力で脅す利根川だったが彼もまた組織的には変えの効く駒でしかなく罪からは逃れたものの辞職の運びとなった。この結末はS18~S20の3年間に渡り特命係を苦しめて来た鶴田官房長官(相島一之)にも重なる部分がある。 また『相棒』の代表的な権力者としては小野田官房長や甲斐峯秋(石坂浩二)がいるが、彼等は権力を単純な脅しではなくテクニカルに使い、遠回りであっても自身が望む結末に着地させてきた。 それと比べると利根川の小物さは否が応でも際立つ。と同時に、彼の元ネタでもある某議員への批判にもなっている気もする。 ここまで攻めた社会派の内容を国民的刑事ドラマでやっても良いのか少々心配になる。