【水飯】まさかの"水かけごはん"が、夏にこんなにうまいなんて!:パリッコ『今週のハマりメシ』第148回
上にのせるのは漬けものや佃煮やみそなど、塩気があってごはんのおかずになるようなものならなんでもいいそうだ。とはいえ、なるべく質素方面の食材が合うだろう。そこで家にあった、わさび風味のなすの漬けもの、しば漬け、青しその身をのせてみたら、がぜん色気が出てきた。 仕上げに、これまた冷蔵庫にあった焼塩鮭の残りをほぐしてごまを少々。氷をふたつほど加えたら、マイファースト水飯の完成だ。飲み過ぎた日々に対する自戒の念もこめ、合わせるのは冷たい緑茶で。 途中までは不安でしかなかったけれど、もう早く食べたくてしょうがない。食欲がぐんぐん復活してくるのがわかる。 まずは水だけをすすってみる。すると、それぞれの食材から滲み出た塩気がほんのりとだけついた薄いだし汁のような感じで、なんの抵抗もなく体に吸収されてゆく。 続いてなす漬けをひとかじりし、いよいよ米をさらさらっ。もぐもぐもぐ、あ、これはいい。 一度洗って水と一緒に口に入れているからか、米ひと粒ひと粒の輪郭や、甘み、少し加えてある雑穀米の素朴な味わいなどが、解像度高く感じられる。決して、温かいごはんより食べやすくして流しこむという感じではなくて、新感覚の(郷土料理に対してその表現もどうかと思うけど)おかず&白米の味わいかただ。 そういうわけだから、漬けものひとつひとつの風味もいつもよりしっかりと感じられ、なんだかありがたい。鮭も当然合うし、だんだん内容が渾然一体となりはじめると、また味わいが変わってゆく。例えて言うなら"冷製半液状鮭弁当"というか。 いや、その表現はぜんぜん美味しそうじゃないな。取り消し。とにかく、素朴で美味しい味わいが清涼な水とともに心身を満たしてゆく快感は、冷たいそうめんやそばとも違う、水飯ならではのものだと言えるだろう。 後半に思い立ち、冷蔵庫にあったすだちを半個絞ってみたら、爽やかな香りと酸味が加わってこれまた抜群だった。 完全にハマってしまった水飯。いろんなおかずと合わせればバリエーションは無限大だし、次回は冷たい酒とも合わせてみよう。 取材・文・撮影/パリッコ
【関連記事】
- 【品川貝づくし】久々の新幹線で、酒のつまみ最高峰の駅弁をつまみに飲む:パリッコ『今週のハマりメシ』第147回
- 【冷やしたぬきそば】突然の衝動に突き動かされて作った、真夏の"立ち食いそば風"冷やしたぬきそば:パリッコ『今週のハマりメシ』第146回
- 【朝ラーメン】500円で食べられることが信じられない、至高の朝ラーメン:パリッコ『今週のハマりメシ』第145回
- 【もつ焼きソバ】ラストオーダー間際に滑り込んだ酒場にて、生まれて初めての麺を使った絶品おつまみ焼きそばに出会う:パリッコ『今週のハマりメシ』第144回
- 【カレーオムライス】地元にずっと前からあったはずなのに見えていなかったノスタルジックファミレスで、ビールと美味と空気に酔う:パリッコ『今週のハマりメシ』第143回