【水飯】まさかの"水かけごはん"が、夏にこんなにうまいなんて!:パリッコ『今週のハマりメシ』第148回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。 【写真】大阪「よあけ食堂」の肉吸いにゅうめん それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。 そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。 * * * この連載の前回の内容が、久々の関西出張へ向かう新幹線内で食べた駅弁「品川貝づくし」の話だった。ところが3泊4日の滞在はあっという間に過ぎ去り、僕は今、東京の自宅にいる。猛烈な関西ロスの真っ最中だ。 僕の仕事は酒場ライターなので、出張と言ってもその内容は、基本的に朝から晩まで飲み歩くこと。4日間で京都と大阪、合計15軒の店を訪れることができた。どの店もそれぞれ本当に良く、今から同じコースをもう一度めぐりなおしたいくらいだ。 そんなことだから、滞在中に飲食するものは酒とつまみがメインになり、食事らしい食事はほとんどとらなかった。せっかくの機会だから、ちびちびと品数多くいろいろ食べたいという気持ちが先行してしまうので。多くの人にとっては異常と思えるかもしれないが、それが酒飲み、いや、僕という人間なのだ。 そりゃあ僕だって、一緒に行った店で麺類好きの友達が食べていた、大阪鶴橋「よあけ食堂」の肉吸いにゅうめんや、「ちほ」の中華そばを、ちょっとうらやましく思わなかったわけではないけれど。 ところで、そんな日々を送っていたら胃腸が疲れるのは当然のこと。帰宅した翌日は、昼を過ぎても食欲がわかず、やっとなにか食べたいなという気持ちになったのは午後3時ごろだった。 なにか、心身が癒されるものが食べたい......。それも、きっちりと栄養はあって、数日間あまり食べられていなかった炭水化物もきっちりとれるような。 そこで、あることを思い出した。数日前に大阪の酒場で友達数人と飲んでいたときのこと。そのなかのひとりが、夏の昼食にぴったりだと教えてくれたのが「水飯」だった。 水飯(すいはん)とは、「水まま」「水かけごはん」「洗い飯」など、他にもいくつかの呼び方がある、山形県の郷土料理らしい。ざっくりと言ってしまえば、読んで字のごとく、ごはんに水をかけて食べるのだそう。 冷やし茶漬けではなく、あくまで水飯。話を聞くとなんだか気持ち悪いような気すらしてしまうが、これが夏バテで食欲がないような日にものすごくいいらしい。作ってみるか。 最大のポイントは、炊いた米を水でよく洗うこと。そこで炊飯器から1膳ぶんの米をざるに移し、水道水で洗う。なんだかいけないことをしている気分だが、米の表面のぬめりをとることが、食感の良さにつながるらしいので。 そうしたら一度よく水気を切り、器によそって冷水を注ぐ。ほ、ほんとうにうまいのか、この料理......。
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