《何があったのか》衆院選、小池百合子都知事、石丸伸二氏、蓮舫氏らの“ねじれた応援”「まるで都知事選場外バトル」の様相
2022年の参議院議員選でも、2024年の東京15区(江東区)衆院補選でも、そして都知事選でも小池都知事と国民民主党は強固な協力関係を築いてきた。その小池都知事と国民民主党が、衆院選で奇しくもねじれた関係になっている。両者の間に亀裂が起きるような何かが起きたと推測せざるを得ない。 国民民主党の動きを見ると、その答えがうっすらと浮かび上がってくる。衆院選最終日となる10月26日、国民民主党の玉木雄一郎代表はマイク納めの地に東京駅前を選んだ。そこに石丸伸二氏が現れて国民民主党の街宣車の上に立ってマイクを握った。 石丸氏は先の都知事選で小池都知事に敗れたものの、事前の予想を大きく上回る165万超という得票で2位となった。そこからテレビやネットの政治番組などに頻繁に出演する寵児になっている。そうした人気急上昇中の石丸氏と玉木代表は、選挙直前にネット番組で対談。その縁から国民民主党と石丸氏は接近したと思われる。 石丸氏は国民民主党や同党の候補者を応援したわけではなく、とにかく投票に行ってほしいと呼びかけただけにすぎない。しかし、選挙期間中、しかも一番大事な最終日のマイク納めに公党の街宣車に乗って演説をする意味を考えれば、国民民主党と石丸氏がただならぬ関係であることは否めない。 国民民主党は人気の高い石丸氏にあやかろうと考えたのかもしれないが、SNSでは国民民主党の支持者から否定的な意見が噴出した。その内容の多くは、国民民主党が打ち出してきた政策と石丸氏の政治理念がまるで違っているというものだった。
肩の力が抜けた蓮舫氏の演説
小池都知事や石丸氏のねじれた関係も気になるところだが、都知事選3位の蓮舫氏も応援演説で都内を精力的に駆け回った。都知事選の際、蓮舫氏には「仮に落選しても、きたる衆院選に鞍替え出馬する予定なのだろう」という指摘も多かった。
そうした指摘が出た背景には、今回の衆院選で東京の小選挙区が5増となることが背景にある。政権交代を目指す立憲民主党にとって、きたる衆院選に一人でも多く勝てる候補を擁立したいと考えていたはずで、参議院の東京選挙区で4選を果たしている蓮舫氏はそれに適っていた。 そうした経緯もあって、「都知事選に落選しても、きたる衆院選に出馬するための準備」と見る向きも強かった。 しかし、蓮舫氏は衆院選には出馬せず、最終的に一都民として衆院選を迎えた。一都民という立場ながらも、立憲民主党の候補者を応援するために都内の街頭に立ち、マイクを握って支持を呼びかけている。 筆者は15年以上にわたり蓮舫氏を取材してきた。先の都知事選では10回以上も蓮舫候補の街頭演説に足を運んでいる。蓮舫氏の演説は大きな声で聴衆に呼びかけるスタイルで、それは都知事選でも変わらなかった。ところが、今回の応援演説は柔らかな語り口になっていた。 これまでも蓮舫氏は、選挙のたびに仲間の応援で各地を回って演説を重ねてきた。2022年の参議院選挙でも自身が出馬しながらも、応援演説で東京を留守にすることが多かった。 応援演説に引っ張りだこになるのは人気の証だが、その一方で相当な重圧を感じていたことは間違いない。 今回、蓮舫氏自身は立候補していない。あくまでも、一都民という立場で応援演説をしている。衆院選の応援演説に立つことに責任をまったく感じていないわけではないだろうが、一人でも多く当選させなければならないという執行部の重圧から解放されて、肩の力が抜けた演説になっていたことは間違いなかった。 都知事選からわずか3か月しか経過していないにも関わらず、3者の関係は大きく揺れ動いている。政治の世界は、一寸先は闇と言われる。今回の衆院選の結果を受けて、自公連立政権は少数与党となる。永田町は混迷を深めることになりそうだ。
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